第7章 巻き込まれた(?)GW
怖いっ怖いっ!
先の見えない闇への恐怖に心臓が縮こまる。
だが私は縮こまる自分を叱咤しながらも、石段を踏み締め登った。
懐中電灯も持ってないカナちゃんは、もっと心細い思いをしてるかもしれない。
私が迎えに行ってあげないと!
だが突然暗闇の中、黒く見える木々がザワザワと音を立てて揺れた。
「っ!」
恐怖に思わず息を飲む。
か、風。単なる風が木が揺らしてるだけ!
妖怪じゃない。妖怪じゃない。
妖怪じゃないように!
私はポケットから数珠を取り出すとぎゅっとそれを強く握りしめた。
と、ふいに後ろからポンッと肩を叩かれた。
「ひっ!」
心臓が勢い良く飛び上がる。
よう、かい!?
「あっち行って――っ!」
私は振り返ると破れかぶれに数珠を投げつけた。
「うおっ!?」
……、…ん?
そこに居たのは、驚いた顔をして数珠を受け止める夜リクオ君だった。
私は思わず呆けてしまう。
なんでここに妖怪姿に変身した奴良リクオ君がいるの?
と、夜リクオ君も私と同じような疑問を言葉にした。
「有永サン。何でここに居るんだ? あぶねぇからさっさと帰んな」
私はその悠然とした奴良リクオ君の姿に、何故か心の平静を取り戻した。
代わりに安堵感のようなものが広がる。
その中ふと気がついた。
ここに夜リクオ君が居るって事は、もしかして牛鬼の屋敷に乗り込みに行くところ?
それにつららちゃんの姿も無い。
もしかして……
「ちゃんと聞いてんのかい?」
「あ、ごめんなさい。うん、もう帰り、ます!」
そう返すと夜リクオ君は唇の片方を上げる。
「気ぃつけて帰るんだぜ?」
「!?」
夜リクオ君が気遣ってくれた!?
原作では、妖怪に変身したら冷たくなるって描かれていたけど、そんな事全然ない。
妖怪の姿でも、人を気遣ってくれる。基本的な性格は人間の時と同じだ。
優しい。
なんだか嬉しくなると同時に、胸の中が暖かくなる。
と、夜リクオ君は無言で私に数珠を差し出した。
……。
ふと思った。
確か牛鬼と戦うけど、傷だらけになる夜リクオ君。
原作では描かれてないけど、牛鬼の所に辿り着くまで牛鬼の仲間に襲われるかもしれない。
思いすごしなら、いい。
でも、旧鼠の時に体調が悪いのに助けに来てくれた奴良リクオ君。
少しでも、恩を返したい。