第7章 巻き込まれた(?)GW
カナちゃんは二階の各部屋を覗く。しかし、誰も居ない。
佇むカナちゃんの身体から、怒りのオーラみたいなものが漂って来る。
「やっぱり、あの子……!」
「カナちゃん、落ちちゅ……」
ああっ、落ち着いて!って言いたいのに、噛んでどうすんの、私!
ガクッ、と項垂れる私に、カナちゃんは据わった目をしつつ口を開いた。
「私、ちょっと出て来るわ……」
「ちょ、待って! 外はもう真っ暗だし、危ない!」
「大丈夫よ! そこまでだから!」
「カナちゃん!」
必死の呼びかけも届かず、カナちゃんは凄いスピードへ別荘の外へと駆け出して行った。
私も靴を履くと慌てて後を追うが、周りを見回してもどこにも姿が無い。
辺りには、暗闇が広がっていた。
どこ行ったの! カナちゃん!!
私の胸には瞬く間に不安が広がった。
どうしよ。カナちゃん、懐中電灯も持たずに飛び出して行ったけど…大丈夫かな?
私はテレビで見た特集番組をふいに思い出す。
キャンプをしていた人達が、正体不明の化け物に襲われ、必死に逃げ出すのだ。
通りがかったトラックに乗せて貰い九死に一生を得るのだけど…
山には、熊も居るけど、正体不明の化け物も居る。
って、言うか、この山、妖怪もばっちり居るー!!
「カナちゃん、探さないと!」
私は一旦別荘に戻り自分のリュックを置いている場所に行くとその中から懐中電灯を取り出す。
そして中には薬とかも入っているので、万が一の為にそれを背負った。
カナちゃん、無事でいて!
私はカナちゃんを追う為に、別荘を後にした。
数分後、麓から続く石段に辿り着く。
懐中電灯で周りを照らしつつ、考える。
上か下。どっち行ったんだろう?
判らない……
じゃあ、私がカナちゃんだったら、どっちに行く?
原作のカナちゃんは、つららちゃんとリクオ君を捜しに出たのだ。
現実のカナちゃんもそう思っているならば、もしかしたら、頂上に縁結びの神社があってそこでいちゃいちゃしてるかもしれない、とか考えるかも。
うん。取り敢えず、上!
私は懐中電灯を固く握りしめつつ、ゆっくりと石段を登って行った。
襲ってくるかもしれない”何か”に注意しながら。