第3章 腹をくくりましょう
そんな私に転機が訪れた。
転校して来て一週間と一日経った朝。いつも通り、登校用の通学路を歩いていると10メートル程先に学生用カバンを肩に掛けた家長さん。いや、カナちゃんが、道の真ん中で立ち止まったまま男子生徒と話していた。
「カナちゃん!」
そう声を掛けながら駆け寄ると、カナちゃんは私の方に振り向く。
「あ、舞香ちゃん、おはよー。もう、聞いて! 朝からサイテー」
「カナちゃん、ほんとーっにごめんっ!」
隣の男子生徒が、両手を拝むように重ねながら、カナちゃんに頭を下げる。
何があったんだろう?
「靴でも踏まれた?」
「違うの。カバンをぶつけられそーになったのよ!」
もうっ、怪我したらどーするのよ!と続けつつ、カナちゃんは半眼で隣の男子を見る。
その男子は、申し訳なさそうな顔をしつつ、ポリポリと頬を掻いていた。
って、奴良リクオ君!?
ここ一週間、ずっと遠くから見ていたのだけど、こんな近くで接するのは初めてだ。
なんだか、心臓がドキドキと騒ぎだす。
視線が奴良リクオ君から外せない。
ど、どしたの!? 私!
不可解な現象に心の中でうろたえていると、奴良リクオ君がこちらに視線を向けた。
「あ、有永さん、だよね? おはよう」
ニコッと人懐こい笑顔を向けられ、慌てて私も挨拶を返す。
「おひゃ……っ」
な、なにか変な言葉が出たー!
いーやー! 恥ずかしいっっ