第7章 巻き込まれた(?)GW
時間が経つにつれ、やっとドキドキは治まりホッと胸をなでおろす。
ドキドキが続き過ぎて、すごく息苦しさを覚えたからだ。
って、言うか、病気なのかな?
うーん。この身体になってからというもの、大きな病気はした事ないんだけどなぁ?
新幹線からバスに乗り換え、午後3時半ごろに目的地の麓の停留所に着いた。
この山が捩目山だ。
私は木々が茂った山を見上げる。
どこにでもあるような山だが、原作通りだとすればこの山の頂上に、妖怪牛鬼が住んでいる。
実感は沸かないが、牛鬼の顔が原作通りなのか、ちょっと興味があった。
と、先にバスから降り、地図を眺めていた清継君が、「ふふ、流石先生。やってくれますね」と呟くと、顔を上げこちらに視線を向けた。
「よしっ! みんな。先生との待ち合わせ場所の梅若丸の祠目指して、出発だよー!」
清継君が、テンション高く、腕を掲げる。
って、ん? 先生って誰?
それに待ち合わせって……?
別荘に行くんじゃないの?
疑問を抱きつつ、ハイテンションの清継君を見る。だが、聞いてもまともに答えは返って来そうにない。修行の一言で済まされる気がする。
うむ。こういう時こそ、原作知識!!
原作通りの流れならば、先生というのは牛頭の見えない糸に操られた小太りのおじさんの事。名前は忘れたけど。
確か原作では、そのおじさんに会って、梅若丸の話し聞くんだっけ?
まあ、私には、関係ないか。
別荘で肉を食べれればいいんだし!
それに、妖怪が襲って来ても、数珠と霊符、しっかり持ってきたしね!
私は、右手でポケットを触った。と、カナちゃんがふいに声を掛けてきた。
「舞香ちゃん。早く行こ。みんな先に登ってるよ」
その言葉にハッと前を見ると、頂上まで繋がっているのか判らないが、上に続く長い長い石段を皆は登り始めていた。
「ごめんっ。あ、カナちゃん、待っててくれたの?」
「だって、友達じゃない」
笑顔で答えるカナちゃんに胸にジーンッとしたものが広がる。
ただ、転校生だから仲の良いグループに入れてくれているだけかと思っていた。
「ありがと。カナちゃん」
「ん?」
何故、お礼を言われるのか判らない、というような顔をするカナちゃん。
それでも、私は心から感謝した。