第6章 鼠の反乱
何故か憤慨しているお母さんを車の中へ連れ込み、奴良家の方々に見送られながら、お父さんは車を発進させる。
そして、一応もう一度肩の傷を精密検査をして貰おうと言う事で、総合病院に連れて行かれた。
異常は無かったが、傷の手当てをもう一度された。
と、包帯を巻かれている最中、ふとお父さんに対しての疑問が沸いて来た。
そう言えば、お父さんが迎えに来た時、周りに妖怪がたくさん居たのだけど何故かお父さんの態度は普通通りだった。
普通の人間なら、驚くか逃げるかする。
うーむ。お母さんが妖怪と知っているから他の妖怪を見ても驚かなかった?
と、ふとある事に気付く。
あれ?お母さんが妖怪って事は、私の身体…半妖?
自分の手を見る。
でも、お母さんみたいな獣の手じゃない。人間の手だ。
この手が獣の姿になった事はない。
ふむ。
もしかしてそのうち、お母さんみたいに獣に変身するようになるんだろうか?
判らない。
「ま、いっか」
「え? どうしたの?」
包帯を巻き替えてくれていた看護師さんが、顔を上げる。
私は慌てて首を振った。
「な、なんでもないです!」
「そう? 痛かったら言ってね」
「はい」
うん。変身した時は、変身した時だ。
今から考えてもどうにもならない。
でも、自分の意志と関係無しに突然変身するって事はないよね?
一抹の不安を抱きつつ、私はそれ以上考える事を止めた。