第6章 鼠の反乱
「仲良し夫婦で良いわねー。うふふ、舞香ちゃんも将来あんな風になるのかしら?」
いや、なりません。
私は無言で首を振りながら、心の中で断言する。
すると、奴良リクオ君のお母さん。若菜さんは、ふふ、と口元を緩めて笑った。
なんだかその笑いが少し寂しそうに見えるのは、気の所為?
と、やっとお互い満足したのかお父さんとお母さんは抱擁を解いた。
そして、お父さんは若菜さんに向かって頭を下げる。
「このたびは妻と娘がお世話になり、感謝します。そして2度もご迷惑を掛けてしまい申し訳ない」
そんなお父さんに若菜さんは片手を振りながら笑顔で答えた。
「いえいえ、迷惑なんてそんな事全然ないですわ。気になさらないで下さいな」
「しかし……」
「それに将来家族になるかもしれないし、予行練習と思えば良いんです。うふふ、先が楽しみだわー!」
語尾にハートがついていそうな言葉を楽しそうに返す若菜さん。
私とお父さんは首を同時に傾げた。
家族? どういう意味だろう?
お父さんも意味が判らなかったのだろう。
そんな中、お母さんは俯き加減になりプルプルと身体を震わせた。
「お母さん?」
「芙蓉。どうしたんだい?」
寒いのかい?と聞くお父さんを押しのけるとお母さんは若菜さんに噛みついた。
「舞香はぬらりひょんのわっぱなんぞには、やらぬわ!」
「あら。うちの事なら気になさらないで下さいね。皆、大歓迎よ!」
「そんな心配しておらぬわー!」
話しが全く見えない。
若菜さんに詰め寄るお母さんを首無さんが間に入って宥める中、私とお父さんは顔を見合わせ更に首を傾げた。