第6章 鼠の反乱
「舞香ちゃん。ごめんなさいねー。怪我人に看病させちゃって」
「あ、いえ、気にされないで下さい」
私は慌てて首を振ると、奴良リクオ君のお母さんは更に明るい笑みになる。
「良かったわー! リクオも舞香ちゃんがこんなに良くしてくれてるんですもの。すぐに良くなるわー!」
「はぁ……」
そんな能力ないから、絶対に無いよ。と心の中で突っ込みつつも曖昧に頷く。
と、奴良リクオ君の背後から男の人の声が上がった。
「舞香」
その声は、頼れるお父さんの声だった。
「お父さん!」
柔和な顔をしたお父さんが奴良リクオ君のお母さんの後ろから顔を出した。
嬉しさでいっぱいになる。
そんな私にお父さんは、きょろりと周りを見回し首を傾げた。
「迎えに来たんだけどね。お母さんはどこだい…?」
「あ、それなら隣の部屋に…」
いるよ、と言いかけていると突然隣の部屋の障子がスパンッと開いた。
障子を開いたのは、お母さんだった。
お母さんはお父さんを見ると、タッと駆け寄りお父さんにギュッと抱きついた。
「遅いぞえ!」
「遅くなってごめんよ、芙蓉」
お父さんは抱きついて来たお母さんの髪を優しく撫ぜる。
皆が呆気に取られながら注目している中、お母さんは、お父さんから離れる気配は無い。
まるで映画の中のシーンのように、2人だけの世界を作っていた。
ううっ、人様の家でラブラブっぷりを披露してどーするの!
私は恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたくなった。
そんな私に奴良リクオ君のお母さんは口を開いた。