第6章 鼠の反乱
ゆらちゃん?
離れた場所に立っているゆらちゃんのお母さんを見る目が険しい。
いや、険しいと言うか、真っ直ぐにきつく睨んでいる。
そんなゆらちゃんの視線を受けながらもお母さんはゆるりとゆらちゃんの方へ振り向き、金色の目で見返した。
「なんじゃ、帰ったのでは無かったのかえ?」
「胸騒ぎがして戻って来たんや!」
まずい、まずい!
ゆらちゃんは陰陽師!
お母さん、祓われる!?
「あ、あの! 花開院さん!」
私は思わずゆらちゃんに向かって声を上げた。
お母さんが妖怪だったなんて、今でも現実から逃げ出したい。
でも、お母さんはお母さん。
祓われるとなると、胸が痛い。
祓うなんて止めて欲しい!
ゆらちゃんは私の叫び声に怪訝そうな視線を向けた。
そんなゆらちゃんに私は言葉を続ける。
「私、大丈夫だから!」
「何が大丈夫やねん! 有永さん、妖怪に食われかけとるやないか!」
違う、違う!
ゆらちゃん、勘違い!!
「違っ!」
必死に反論しようとすると、お母さんは眉間に皺を寄せながらジロリとゆらちゃんを睨んだ。
「五月蠅い小娘だのう。今、妾は忙しい。さっさと帰るのじゃ」
その言葉に、何か勘違いした様子のゆらちゃんは私に向かって声を上げた。
「有永さん、今助けるさかい待っててや!」
「だから、花開院さん、違う!」
一生懸命ゆらちゃんの言葉に反論していると、突然後ろから男の人の声が上がった。
「……何やってんだい?」
艶やかな低い声。
この声は……、夜リクオ君?
私は上半身を起こし、後ろを振り向く。
そこには窮鼠との戦闘を終えたのか、夜リクオ君を先頭に様々な妖怪が後ろにずらりと並んでいた。
人型の妖怪達は許容出来るけど、2メートルほどもある大きな毛の塊りの妖怪や、牛車に1メートルほどもある鬼の顔がついた妖怪とかは、こんな状況でも心臓が飛び上がるほど驚く。
うあっ、壮観!!
と、言うか、後ろの巨大な妖怪、怖いよ!
お母さんもゆらちゃんから奴良組の面々へと視線を移動させた。
そして夜リクオ君の上で、視線を止めるとおもむろに口を開いた。