第6章 鼠の反乱
只今絶賛、舐められ中です。
お母さんから……。
私とゆらちゃんを戦闘区域から離れた場所に誘導したお母さん。
そして、学生は早く帰らないといけない、とゆらちゃんへ先に帰るよう促した。
その後、遠くで奴良組と窮鼠達の戦う音がする中、お母さんと2人きりになる。
なんでここに居るのか。
なんで鉄の檻を軽々と曲げれたのか、聞きたい事がたくさんある。
私はネオンの灯りの下、綺麗なお母さんの横顔をそっと見た。
と、突然私の方を向くとキッと強い眼差しを向けられた。
そして、私の両腕をガシッと掴んだ。
「舞香! なんじゃその傷は!」
「へ?」
突然の事にキョトンとしていると、お母さんの姿は見る間に変容して行った。
4本足歩行の獣へと。
身体は豹のような獣体型だが、尾には狐のような尻尾が2本。そして、頭に白い角が1本生えている。
私は頭が真っ白になった。
お母さん、妖怪だったー!?
いや、『ぬらりひょんの孫』の世界だから妖怪が普通に居る事はいるだろうけど、お母さんまで妖怪だったなんて……
「お、母さん?」
それでも、何かの間違いであって欲しいという思いから、本当にお母さんかどうか声を掛けてみた。
すると獣の口から、いつものお母さんの声が聞こえて来た。
「舞香。じっとしておるのじゃぞ」
お母さんだ。
私のお母さんだ。
お母さん、豹みたいな妖怪だったんだ…
現実逃避したい……
と、お母さんは私の身体を両足を使って地面に押し倒すと肩に足を置き、鋭い牙で洋服の肩口をビリッと裂いた。
「お母さん!?」
「まったく……深く噛まれおって。玉の肌に傷が残ったらどうするのじゃ」
「え?」
と、お母さんは傷口をおもむろに舐め出した。
ザラザラした舌が痛い。
「ちょ、お母さん、痛い!」
「我慢せい。こうすれば、治りが飛躍的に良くなるのじゃ」
そう言えば、親猫が自分の子供の怪我を一生懸命舐めていたのを見たことがある。
確か、唾液には殺菌作用があるからだっけ?
でも、お母さん、私は獣じゃない!
「痛い、痛い、もういいって!」
「ダメじゃ」
と、突然鋭い叫び声が割り込んで来た。
「妖! 有永さんの上からどきい!」
顔だけ上げて声がした方向を見ると、先に帰宅を促したはずのゆらちゃんが2メートルほど離れた場所に立っていた。