第6章 鼠の反乱
下っ端のネズミ顔ホストに腕をぐいっと引っ張られ、ゆらちゃんと離れ離れにさせられた。
そして、そのまま肩口に牙を立てられる。
「いっ!!」
痛い、痛い!
噛まれた所がすごく痛くて熱い。
私は痛みから逃れようとすごく暴れた。
でも、妖怪の力には敵わない。
いやだ。
こんなヤツに、食べられるなんて
イヤだ。死にたくない、
「いやぁーー!」
叫んだとたん私の上にドンッと光の塊が落ちた。
「ギャッ!」
あ……?
白い光が瞼の裏を焼いたのは一瞬だった。
目を開けるといつの間にか、ネズミ顔ホストの拘束は解かれていた。
ネズミ顔ホストの姿形が無い。
ただ、黒い塵のようなものが、辺りを漂っている。
今の光、なに?
この黒い塵みたいなのは…なに?
呆然としていると、突然、低く艶やかな声が辺りの空気を震わせた。
「待たせたな……。ネズミども」
この声はっ!
私は頭を真っ白にしたまま、声のした方へ首を巡らせた。
鉄の格子の向こう側には白い靄が足元にたちこめている。
その中黒い影の集団が居た。
あれは、もしかして、夜リクオ君が…率いてる百鬼夜行……?
「なんで…?」
思わず疑問が口から突いて出る。
なんでここに?
と、離れた場所からゆらちゃんの呆然とした呟きが聞こえて来た。
「うそ…百鬼夜行……? まさか…」
その声にやっと得心がいった。
私ではなく、ゆらちゃんを助けに来たのだ。
そう言えば、天敵の陰陽師に恩を売るのも悪くない、と言っていた一場面があった気がする。
現実でもそう言って、百鬼夜行を率いて出入りに来たのだろう。
と、巨大ケージの横の椅子に座っていた金髪ホストが、ガタンっと立ち上がりその集団の先頭に向かって吠えた。