第6章 鼠の反乱
カナちゃんを家まで送り届けた私は、ホッと一息つくと踵を返し、足早に駅へと向かった。
と、繁華街へ通りかかると、とぼとぼと歩く少女の後ろ姿が目に入って来た。
しかも服装は、繁華街に似つかわしくない、制服姿だ。
あれは、花開院ゆらちゃん?
私は、そのあまりもの落ち込んだとぼとぼした歩き方に、思わず後ろから声を掛けてしまった。
「花開院、さん」
「あ……、あんたは……」
と、そこでゆらちゃんに自己紹介していなかった事を思い出す。
「私有永舞香っていうんだけど……、どしたの?」
私は横に並ぶと首を傾げながら、花開院さんの顔を見た。
「私は、花開院ゆらや。……私、修行が足りひんな……って……」
「花開院さん……?」
「奴良君に迷惑かけてもーた……」
そうか。奴良リクオ君にすごく迷惑かけたな、ってぐるぐるしながら反省してたんだ…。
私は花開院ゆらちゃんの左手をそっと握った。
「大丈夫。次は迷惑かけないようにすればいいと思う。それに奴良君はもう何とも思ってないかもよ?」
「でも、うち……」
「元気出して。それでも気が済まなかったら、明日改めて謝ればいい」
「……うん。ありがとう……」
顔を上げ、少し微笑む花開院ゆらちゃんに私は笑い返した。
と、突然後ろからナンパそうな男の声が聞こえて来た。
「わっ、女の子が落ち込んでるよ~~。ふふふ。悩みごとならこのボクが聞いてあげるよ~?」
ゆらちゃんと一緒に後ろを向くと、金髪のホストのお兄さんが居た。
綺麗というか端正な顔っぽいが、夜リクオ君と比べたら、月とスッポンだ。
私は眉を顰めると少し後じさり、片手を振った。
「いえ、解決したので、結構です。花開院さん、帰ろっ!」
私は花開院さんの手を引き、その場を立ち去ろうと足を踏み出した。
しかし、突然ザッと別のホストの人が2人立ち塞がった。
あ……れ? まって? まって? この状況って……
「つれなくするなよ。子猫ちゃん~」
後ろのホストの男がまた近付いて来て、私と花開院さんの肩に手を置いた。
「なあ、あんたら、三代目の知り合いだろ?」
と、そこでゆらちゃんがその手を振り払いながら、鋭い声を上げた。
「触るなや! ネズミ!」
ネズミって…ああ、やっぱり!
窮鼠編に巻き込まれたー!
と言うか、私って、私って、カナちゃんの立ち位置ー!?