第5章 恐怖の人形とご対面
腰まで伸びていた黒髪が、うぞぞぞ、と更に伸びて行く。
まるで髪の毛が生きているかのように。
「っ!」
恐怖に悲鳴が喉元までせり上がって来る。
心臓がバクバクと早鐘のように打ち、身体に細かな震えも走った。
ただの絵だったらそんなに恐怖は感じないけど、実際直面してみると、すごく怖い!
と、私の右斜め前に居た奴良リクオ君が、バッとこちらへと振り返った。
私の顔を見ると、きゅっと唇を引き締めた。
そして、清継君の方を向くとそちらに突進して行った。
「清継君! それ以上日記を読んじゃダメ――!」
「奴良君?」
しかし、清継君が読むのを止めても人形の動きは止まらなかった。
般若のような顔になると、右手には抜身の刀を持ち、こちらに向かって飛んで来た。
「ひっ!」
心臓が止まりそうになる。
もうだめっ!と、目をぎゅっと閉じると、バシッと何かが弾ける音と共に、「滅っ!」という掛け声とドゴンッと何かが爆発し砕け散る音がした。
え? ……、え?
そーっと目を開けると襲って来た人形は、鎮座されていた棚から少し離れた所にシュウシュウと焼け焦げた臭いを漂わせながら、落ちていた。
あれ? やっつけられてる?
って、あ! そう言えば……!
今頃になって呪いの人形事件の詳細を思い出す。
動き出した人形を花開院ゆらちゃんが、人形(ひとがた)のお札を飛ばし滅するのだ。
流石、花開院ゆらちゃん! 札を飛ばす所、見れなかったけど、呪いの人形やっつけるなんて、半端じゃない!
カッコいい!
心の中で、じーんっとしていると、「ちょっと……」と肩をぽむっと叩かれた。
私の肩を叩いたのは、花開院ゆらちゃんだった。
何? 何? どうかした?
花開院ゆらちゃんは、私の顔をじっと見ると小さく眉を顰めた。
「あんた、何持っ…「花開院さん! 今のは一体なんなんだい!?」
が、なにか言いかけた花開院ゆらちゃんの両肩を清継君がガシッと掴む。
花開院ゆらちゃんは、一瞬ほけっとしたような顔をするが、その後しっかりと頷き返した。
「……はい。陰陽師の術です」
「陰陽師!? と、言う事は、この人形は……!?」
「ええ……本物です。ほんまにあぶないとこでした」
と、清継君は「やった! やったぞ!」と歓喜の声を上げる。
その中、私は花開院ゆらちゃんを見た。
さっき何を言いかけたんだろ?
「なにも」……???
