第5章 恐怖の人形とご対面
なんで一番大事な場面に滑舌が悪くなるの! 私!
もう一度。もう一度時間を巻き戻して下さい!
そして、反論させてー!
心の中でおいおい嘆いていると、清継君が部屋の奥から、こちらの方に向かって声を張り上げた。
「君達! なにをしてるんだい! こっちだよ!」
ふと顔を上げて見ると、部屋の中央で色々なものを眺めているリクオ君やつららちゃん。そしてカナちゃんが居た。
至近距離で、あのセリフを聞かれた事に恥ずかしさで顔が赤くなる。
私は俯きながらトコトコと清継君の傍に歩み寄った。
すると清継君はテンション高い声で、言葉を続けた。
「これが例の呪いの人形さ!」
わたしはチラッと視線を上げる。
清継君の斜め後ろにある棚の上に、白い陶器の顔を薄汚れさせた日本人形が置かれていた。
黒く四角い台の上に赤い着物を着た市松人形。
高さは20センチくらい。
ふっくらした顔立ちをしているが、バサバサの黒髪が腰まで伸びている。
えーっと、日本人形ってこんなに長い髪してるんだっけ?
記憶を探ってみたが、あまり見たことないので、標準の長さが判らない。
私が見たことがある人形はおかっぱ頭だ。
でも、もし、髪が伸びていたとしたら、すごく不気味だ。
それに、いかにも呪いの人形っていうような風貌だし……っ!
やっぱり、原作のように動きだすのかな?
用心しながら、じっと見ていると、花開院ゆらちゃんが一歩足を前に踏み出し、人形に顔を近付けるとまじまじと観察した。
「本当に……呪いの人形なん?」
「信ぴょう性は高いと思うよ。一緒に持ち主の日記が残ってるんだ」
花開院ゆらちゃんの言葉に清継君は人形の隣に置いていたノートを手に取った。
そして、それを読み上げ始めた。
「2月22日……。引っ越しまであと7日……」
ほうほう。引っ越しに乗じて祖母から貰った怖い雰囲気の日本人形を思い切って捨てる事にしたのか…。
勇気あるなぁ。日記書いた人。
私なら……実家があるなら実家の母親とかに預けるかな?
怖くても、捨てるのってもったいないしね。
そう思いつつ日記を読み続ける清継君を見ていると、突然奴良リクオ君が「ああっ!?」と驚いたような声を上げ、人形に覆いかぶさった。
何、何!? どしたの!?
驚いて奴良リクオ君に視線を移すと、奴良リクオ君は手元をゴソゴソさせていた。