第5章 恐怖の人形とご対面
そう言えば、始めの頃の奴良リクオ君は、妖怪イコール悪と考えてて、悪いことしたら妖怪とバレるって思ってたんだっけ?
それから考えると犯罪者も妖怪って考えに至ってしまうんだけど……
なんだか、すごく純粋な考えだ。
だから、あんなに明るい笑顔で笑えるのかな?
そんな奴良リクオ君を見てると、なんだか胸が暖かくなる。
「あっ、いっけね! 次の授業の資料持って来るの忘れてた! 有永さん。じゃあね!」
奴良リクオ君は、ハッとすると雑巾を教壇の脇に掛け、慌ただしく教室を飛び出して行った。
多分、資料を持って来る事も自主的にやっている事なんだろう。
偉いなぁ、と見送っているとチョンチョンと後ろから肩をつつかれた。
「なあに話してたの? 舞香」
肩をつついて来たのは、友達のうちの1人だった。
もう1人はカナちゃんと2人で机をくっつけ楽しそうに会話していた。
「いや、奴良君、1人で拭き掃除して偉いねって話しをしてた」
「えー! そんな話しだったのー? 2人楽しそうだったから、突撃してきたのにさー」
んん?
「そんなに楽しそうだった?」
「うん。お花飛ばしてたよ。それにカナもなんだか気にしてた」
「なにも無い無い。誤解だよ」
苦笑して、手を横に振る。
そして私はもう1人の友達と会話しているカナちゃんを見た。
明るく笑ってるけど、幼馴染と仲良く話している私を見て、心中複雑だったのかもしれない。
カナちゃん。カナちゃん。奴良リクオ君とは、なんでもないよー。
ただのクラスメイトだよー。
通じないと判っていても、私はカナちゃんに心の中で語りかけた。
私はモブだよー