第5章 恐怖の人形とご対面
と、清継君が奴良リクオ君から答えを吐き出させようと襟元を掴み、身体を激しく揺さぶった。
「妖怪、居たよね! 見たよね奴良君! 妖怪ーー!」
「えぐうっ、ぐは……、しらないよー!」
と、清継君の暴走を止めるように可愛らしい声が横から割って入って来た。
「それって不良と間違えたんじゃないかしら?」
声が聞こえた方に視線を移すとそこには、長い黒髪に目がつぶらな美少女が立っていた。
4月なのに何故かマフラーをしている。
「おお、君は確か……」
「ええ。あの時みんなと一緒に参加した及川よ。私も妖怪なんか見なかったわ。きっとたむろしてた不良が脅かして来たんじゃない?」
って、及川って言ったら、雪女の氷麗ちゃん!
おお!あの時は、夜だったからまともに見てなかったけど、こうしてみるとすごく可愛い!!
うわー! あの可愛さ! 感動!
じーん、としている間にも、清継君と氷麗ちゃんの会話は進んで行った。
「いや、しかし確かに……」
「あら。もしかして気絶でもしちゃってたの? 情けないわぁあ――」
「そ、そんなっ! し、してないぞ! 気絶なんて!」
「そうよね。男の子が気絶なんてー」
「あ、ああ、不良。確かに不良だったね。覚えてる。覚えてる!!」
流石と言うべきなのか。
氷麗ちゃんはまるっと清継君を言いくるめた。
そして、「そーか、そうだよな!」と自分に言い聞かせながら去る清継君とそれを追う島君の後ろ姿が見えなくなると、おもむろに肩にかけていた学生カバンから、お弁当箱を取り出した。
それをずいっと奴良リクオ君に差し出す。
「はい。私のお手製弁当! 忘れちゃダメですよー」
と、奴良リクオ君はチラッとこちらを見ると、氷麗ちゃんの手首をガシリと掴み、そのまま廊下の向こうまで駆け去って行った。
私達はポカーンとしながら、それを見送る。
なんだったんだろう?
首を傾げた私だったが、ふと原作を思い出した。
そーいえば、こんな場面もあったっけ?
確か、妖怪である氷麗ちゃんが学校に来ること自体拙い、と思ったからだっけ?
それとも、カナちゃんの前でお弁当渡されるの誤解されたくなかったからだっけ?
そう思いつつ隣に居るカナちゃんにチラリと視線をやる。
!?!?!?
カナちゃん!?
カナちゃんは、怖いほどジト目で廊下の向こうを見ていた。
カナちゃん、どしたの!?