第13章 わくわく京都への旅
しばらくすると、タッタッタッと複数の足音が聞こえてきた。
リクオ君の腕の中で、首だけ動かし斜め後ろを見ると、どこかで外したのか拾ったのか判らないけど、一枚の畳の上に黒髪の少女を横たえて、奴良組の組員と思われる妖怪達がその畳を運んで来た。
その畳は私達の丁度後ろに置かれる。
さっきは遠目で顔の造形はあまり判らなかったけど、間近で見ると原作通り美少女だ。
でも、紙面からは判らなかったが、現実では顔色がすごく悪い。
白を通り越して蒼白となっている。
多分、血を流し過ぎたからだろう。
今も頭と右目の部分に包帯を巻いているが、まだ血が止まってないのか、右目の部分から血が滲み出ている。
夜リクオ君は私から腕を解くが、今度は肩に回し、そのまま黒髪の少女、山吹乙女さんの傍に膝まづいた。
肩を抱かれている私もそれにつられ、膝を折り座り込む。
すると、傍に夜リクオ君の気配を感じたのか、乙女さんはゆっくり片腕を夜リクオ君の方へと伸ばして来た。
「大きく……なったね。リクオ……」
震えながら伸ばされた手を夜リクオ君は空いている方の手で掴む。
すると乙女さんは、薄っすらと笑った。
「あの人に瓜二つ……」
あの人?
私は思わずリクオ君を見る。
確か原作では若かりし頃のぬらりひょんさんとそっくりだったけど、乙女さんが言ってるのはぬらりひょんさんじゃないよね?
てことは、鯉伴さん?
んー? 似てるかな? 髪形はソックリだけど……
あ! もしかして、意識が朦朧としてて髪形しか判別出来てない?
心の中で首を傾げていると、乙女さんは弱弱しい声で言葉を続けた。
「妾も子が持てたなら……、あなたのような子供だったのでしょう……」
そして目を閉じた乙女さんは、小さな声で呟くように願いを口にした。
「リクオ……。妾とあの人の分まで幸せに生き……て……」
「おい、……、おいっ!」
夜リクオ君が突然慌てたように大声で乙女さんに声を掛ける。
だが、乙女さんの瞼はもう開かなかった。
夜リクオ君が掴んだ乙女さんの手先は力が抜けたようにダランとなっている。
え? え?
そう言えば、原作でも乙女さんってここで死ぬんだっけ?
死ぬ?
背筋にゾクッと寒気が走り、私は思わず近くに居るお父さんを見上げた。
「お父さんっ! お願い、助けて!」