第13章 わくわく京都への旅
羽衣狐の依り代だった山吹乙女さんは、漫画の中でしか見た事が無く、現実では初めて相見(あいまみ)えたばかりだ。
初対面の人を助けて欲しいとお父さんに願う必要なんてないかもしれない。
でも、救える手段があるのに、それを使わず、目の前の人が死んでいくなんて嫌だ!
お父さんに助けを乞うが、お父さんは乙女さんを見ると目を伏せ、ゆっくりと頭を横に振った。
「お父さん、なんで!? この人死にそうなんだよ!? 緊急事態だよ!!」
そう言葉を続けると、ふいに私の肩を掴む夜リクオ君の手に力が籠った。
そして小さく夜リクオ君から名前を呼ばれた。
「舞香……」
何!? 今、お父さんへのお願いで忙しいのに!
と、少しイラつきながら、隣に居るリクオ君の方を向く。
「…………」
こちらを向いた夜リクオ君も静かに目を伏せ、小さく首を横に振った。
え? どういう事?
まさか、と思いつつ、畳の上で横たわっている血まみれの乙女さんを見る。
眠っている珱に閉じられた目。しかし胸元は動いていない。
ただの大きく精巧な人形が横たわっているようだ。
え? え?
生きて、るよね?
私は右手を乙女さんへと伸ばすと青白い頬に触れた。
ひやっとした冷たい感触が指先に伝わって来る。
まさか。もう……手遅れ?
死んでしまってる?
更に私は鼻の下に手をやってみた。
息をして、ない。
眠っているように見えるのに、違った。
死んでいる。
その事実に直面したとたん、頭の中が真っ白になった。
そして徐々に泣きたい気持ちが胸の奥から沸いて来る。
私がもうちょっと早くお父さんに助けを求めていたら、死ぬことは無かったのに……。
私が鈍感だったから……。
唇が小刻みに震え、胸の奥から熱い塊が込み上げて来る。
バカだ……。私、バカだ!
ぎゅっと固く目を閉じ唇を噛み締めると、唐突に右肩を引かれた。
「わっ!?」