第13章 わくわく京都への旅
朧げな意識が白い空間の中を彷徨う。
と、どこからともなく声が聞こえて来た。
―――ごめんよ、舞香。
―――結界の条件設定が甘いようだったね。
この声は………、お、とうさ、ん?
そう認識した途端、後頭部がズキズキッと強く鋭い痛みを発した。
痛い! 痛いのに声が出ない!
何故か腕も動かせない。
痛い! 痛いーっ!
心の中で叫んでいるとふいに痛む部分が暖かいナニかに包み込まれ痛みが和らぐ。
痛みが和らぎ、ほっと息を付くと、何か轟音のような音が聞こえて来た。
……? 何? なんの音?
と、ふいに耳元でハッキリした声が聞こえて来る。
「聞こえるかい? 舞香」
急速に意識が現実感溢れる世界へと浮上した。
肌に微かな風を感じる。
そして、「山ン本!?」「山ン本五郎左衛門だと……!?」という騒めき声も聞こえて来た。
薄っすらと目を開けると目に入って来たのは、優し気な笑みを湛えたお父さんだった。
「あ……、れ? お父さん……?」
私が声を発すると、お父さんは凄く安心したかのように、ほっと大きな息をついた。
「間に合ったね……」
「まにあった………?」
そうオウム返しに言葉を紡いでいると、意識が徐々にハッキリして来た。
「あ……? 私、さっき氷麗ちゃんが襲われそうになったのを見て、それはだめ、って思って……」
そうだ。無意識に身体が動き、氷麗ちゃんを庇って覆い被さったとたん、後頭部に重い衝撃が来たのだ。
あの後、目の前が真っ白になって、そして気が付くと目の前にお父さんが居る。
お父さんは片膝を地面に付け、腕の中に私を抱いていた。
「お父さん、なんでここに……?」
それにここ、どこ?
周りを見回すと襖や障子そして壁や廊下は半壊状態だ。
すごいボロボロ。
でも城だった事は判る。
城って事は弐條城。
「なんで弐條城がボロボロに……」
と、ふと原作を思い出した。
そう言えば弐條城って羽衣狐が鵺ヶ池から上空に飛び出す場面の時に半壊状態になったよね。
現実でもやっぱりそうなったのかな?
私は城の壊れた隙間から上空を見上げた。