第4章 夜若との遭遇
「あのっ!」
私の呼びかけに、奴良リクオ君はビクッと大きく肩を揺らし、こちらを見上げる。
「!? 有永さん!?」
暫らく目をまん丸にして、固まっていたが、正気に戻ると瞬時にその場に正座をし、自分の後ろに鴉天狗を隠した。
気の所為か顔に汗がツツーッと流れている。
「い、今のは九官鳥だからっ! えっと、それより有永さん。何してたの?」
と、奴良リクオ君の後ろで「若ー!? 誰が九官鳥ですか! モガモガ…」と抗議の声が聞こえて来る。
そっか。九官鳥。うん。九官鳥にしといた方がいいよね。
私は、鴉天狗の言葉を聞かないフリをして、家に電話をしていた事を告げた。
そして、なぜか誰も電話に出なかった事も。
奴良リクオ君は、私の言葉に考えるように首を小さく捻った。
「もしかして、警察に行ったのかな…」
「………」
あの心配症のお母さんの事だ。有り得る。
うわーっ、奴良リクオ君に迷惑かけてしまう!?
どーしよー!?
内心パニックに陥っていると、パタパタパタという足音が近付いて来た。
廊下の向こうから現れたのは、ショートヘアに着物姿の女性だった。
「母さん?」
奴良リクオ君はその女性を見て呟く。
ニコニコ笑顔で現れた奴良リクオ君のお母さんは、吃驚するような事を口にした。
「リクオ、有永さんのご両親がいらしたわよ―」