第4章 夜若との遭遇
「へ?」
耳に飛び込んで来た言葉に、思わず呆けたような声を出してしまった。
お母さんとお父さんが、迎えに来てくれた?
ここに居るって言わなかったのに、なんで?
首を捻っていると、奴良リクオ君はスクッと立ち上がり、太陽のような笑顔で口を開いた。
「有永さん。迎えが来たんだって。良かったね!」
「あ、うん。えっと、奴良君。お世話になりました」
ペコリと頭を下げると、奴良リクオ君は慌てたように片手を横に振った。
「うわ、頭上げてよ、有永さん! ボクは別にお世話なんてしてないし……!」
「あはは、でも、泊めて貰ったから」
そう言って笑う。
と、何故かリクオ君の動きが止まったと言うか、固まった。
ん? 私の笑顔、そんなに……怖かった!?
どうしよう。どうしよう!
もう笑わない! 絶対に!
そう決意しつつ、慌てて奴良リクオ君に向かって「奴良君!」と呼びかけてみる。
だが、動かない。
呆然と突っ立ったままだ。
いやーっ、どうしよう!
そんなに笑顔が不気味だったんだ! 私のバカー!
と、横で軽やかな笑い声が聞こえて来た。
主人公である奴良リクオ君のお母さん。若菜さんだ。
「あらリクオったら。やだわ。女の子の笑顔を見て固まるだなんて成長したわね!」
リクオ君の顔を面白そうに眺めては、顔の前で手を振ったりしている。
ううっ……私の笑い顔が不気味だったばかりに……
泣きたい……
「本当にすいませんっ!」
「あら。何を謝ってるの? 逆にいいもの見せて貰ったわ」
語尾にハートマークがついていそうな程、明るく機嫌の良さそうな返事だった。
もしかして、私を安心させる為に明るく返事をしてくれたのかもしれない。
私は心苦しく思いながらも肩をすぼめる。
と、若菜さんはそんな私の肩を笑顔でポンッと叩いた。
「さ、行きましょ! ご両親が待ってるわ!」
「はい……」
若菜さんは、まだ固まったままのリクオ君に心を残した私の腕を引っ張り、玄関へと案内してくれた。
玄関に着くと横長頭のおじいさんがお父さんと和やかに話していた。
あ。あの頭の形。
もしかして、『ぬら孫』主人公のお爺さん。ぬらりひょん!?
おお!ホンモノ!!
まじまじとその後ろ姿を見ていると、ふいにお母さんの声が上がった。
「舞香!」