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【ぬらりひょんの孫】転生は大変です

第4章 夜若との遭遇


どこかに出かけたとか?
こんな朝早くから…、どこに?
でも、誰も出ないって事は、お父さんも居ない……?

眉を顰めながらも漠然とした不安を胸に沸かせていると、ふいに庭に面した廊下の向こうからドタドタドタッという足音が近付いて来た。

うわっ、なに!?

吃驚しながら障子の方を見ていると、「カラスー!」という奴良リクオ君の叫び声と共に、この部屋の前でズダンッと派手に転ぶ音がした。
慌てて立ち上がり、そっと庭に面した障子を開けると、部屋の前の廊下に、うつ伏せになった状態でカラス天狗を両手で握りしめ、手の中の鴉天狗をジトーッと半眼で見ている奴良リクオ君が居た。
そして私が見ている事に気付かない様子で、奴良リクオ君は鴉天狗に口を開いた。

「どこに行こうとしてるんだよ!」
「わ、若!? 拙者はただ客人に手桶を持って行こうとしただけですよ」
「客人って、有永さんの事?」
「いえ、名前は伺っていませんが、大層可愛らしいお嬢ですな。さすが若が見い出した女性。しかし、最初は清い交際からですぞ?」

キリッとした顔で奴良リクオ君に妙な事をのたまう鴉天狗。

と、私は『大層可愛らしい』と言う言葉に吃驚した。

おーい、私の顔は平凡だよー。可愛らしいってのは、カナちゃんにこそふさわしいんだよー。
それになにか、勘違いしてない?
夜リクオ君には、ただ助けられただけなのに?

「あの、ちょっ…「まだ交際なんてしてないよ!」」

勘違いを正そうと声をかけようとしたが、奴良リクオ君の慌てたような声に阻まれた。

「しかし、若自らが拙者にあの女性の世話を頼まれたのです。と、言う事は、若の特別な女性でしょう!」
「ボクがカラスに?」
「そう。昨日の夜。鴆様の前で若は妖怪となられ、いや――、美しゅうござった。りりしゅうございました」

うんうん。と頷く鴉天狗。それにリクオ君は訝しげに鴉天狗を見た。

「何の話しだよ。ボクそんなの知らないよ?」
「ハッハッハッ。しらばっくれなくても宜しいですぞ! この鴉天狗。時代が変わる…そんな戦慄さえ覚えましたぞ!」
「だからホントに覚えてないんだってば!」

うーむ。この2人の会話、終わりそうにない。
聞いてて、興味は尽きないんだけど、このまま聞いてたら、奴良リクオ君にとって拙いんじゃないかな?
そう思い、私はお腹に力を入れ心持ち力強い声音で声をかけた。
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