第13章 わくわく京都への旅
何かが頬に触れる感触にすぅっと意識が浮上する。
あ、れ……? 私、どうしたっけ?
確か、清継君達と花開院の家で……
ぼんやりする頭で記憶を辿っていると、ふいに何かを開く音と男の人の声が聞こえて来た。
「何の用だぁ?カス虫」
「ご挨拶ですね。部下からあなたがマリアのような女性を連れて帰って来たという報告を受けたので、この目で確かめに来たのですよ」
んー? 誰だろ?
興味を引かれそっと薄目を開けてみると私は布団に寝かされていて、左脇に顔半分に板を張り付けた茨木童子が居た。その向こうの障子側には神父の服を着た長髪のお兄さん。
のぉぇええええっ!?
なんで茨木童子が傍に居るの!?
それに障子の間に立っている神父の格好をした長髪のお兄さん、誰っ!?
ど、ど、どっかで見た気がするけどっ!
身体を強張らせながらも私は即座に目をぎゅっと瞑った。
気が付いた事がバレたら拙い気がするっ!
ハラハラしたが、私の変化に気付かなかったのか、2人の会話は続いた。
「はっ、そりゃあご苦労な事だな。だがこの女はマリアじゃねぇ」
「どうやらそのようですね。私の徒労でした」
大きな溜息と共に茨木童子の言葉に返答する長髪お兄さんの声。
と、それに対して茨木童子は「だったら、さっさと去ね」とそっけなく言い放つ。
「その女性は我が女神への供物でしょうか?」
………、ん? くもつ?
くもつ、くもつ……くもつって何だったっけ?
穀物じゃないし……
むう? と、目を瞑ったまま考え込んでいると茨木童子が鬱陶しそうな声で返答を返した。
「どうでもいーだろうが」
「供物ならば私が預かりましょう」
「あん?なんでお前に渡さねーといけねぇんだあ?」
「私ならば貴方よりも迅速に我女神へ供物を運ぶ事が出来るからです」