第13章 わくわく京都への旅
ちょ、ちょ、ちょー!?
板を顔に貼り付けた『ぬらりひょんの孫』の中の妖怪って言ったら、茨木童子しかいないよねー!?
なんで、ここに茨木童子がいるのー!?
花開院家をしょうけらが襲う場面に茨木童子って登場しなかったよね!?
どゆこと!?
頭の中でぐるぐる考えていると、怒りの籠った声が耳に響いて来た。
「おい……オレを無視するたぁいい度胸してるじゃねぇか。女」
「え!? いや、無視なんてそんな、してない、してない!」
慌てて顔を上げ首をブンブンと振るが、茨木童子の眉間の皺は消えない。
茨木童子は暗い目で私を睨むと腰元から刀をスラリと引き抜いた。
「女ぁ。おめーは一体何の目的でここに居る……? 返答によっちゃあ斬る」
手に持った長い刀が鈍い光を放った。
え? え? 何の目的って……っ えーっと……
「妖怪ツアー?」
「妖怪ツアーだぁあ? ふざけやがって。女ぁあ。覚悟は出来てんだろーなぁ?」
「えぇえ!? ほ、本当だって! ふざけてな「鬼太鼓」
私のセリフを遮り、そう技名を口にしたとたん、いつの間にか茨木童子の周りに円を描くように雷の塊が幾つも取り囲み、そこから幾筋もの雷の光が私に向かって放たれて来た。
「わゎわ、わー!?」
いきなりの攻撃になすすべもなく、私は立ちすくんだ。
迫りくる雷の光に目を見開くことしかできなかった。
あっと言う間にその雷の光は私の体に全て直撃する。
「!!!」
襲い来るであろう衝撃に思わず目をぎゅっと瞑る。
「…………、?」
が、何も起こらない。
ただ額の部分でバチバチと電流がスパークしているような音が聞こえて来るだけだ。
何も衝撃はない。
そっと目を開き、ほうっと安堵の息を吐くと茨木童子は小さく呟いた。
「オレの雷撃の矢を全て吸収しやがっただと……」