第13章 わくわく京都への旅
何故か氷麗ちゃんの身体から、冷気が漂って来る。
その冷気に怒りが籠っているようで、氷麗ちゃんが謝っても許さない、と言っているように感じる。
本当に、ごめんなさい……。
眉を下げながら、真剣な面持ちで氷麗ちゃんの次の言葉を待った。
「今後一切リクオ様に近付かないでちょうだい!」
「え?」
リクオ君に、近付いたら、ダメ?
なんだか、すごく胸が苦しくて泣きたくなる。
もっと楽しく話をしたい。もっとリクオ君の笑顔を見たい。
「……友達でも、ダメ?」
「ダメですっ!」
即座にダメ出しされ、私は口を閉じた。
氷麗ちゃんの言ってる事は、正論だと思う。
また私が妖怪化してリクオ君を襲ってしまうと思っているから、近付かないように言ってるんだ。
あの時、どうしてリクオ君の肩に怪我させたのか、覚えてないから、妖怪化してもリクオ君に怪我をさせない、という保証は私自身出来ない。
私は下唇を噛み締めると、小さく頭を動かし頷いた。
また、怪我をさせるから、もう、近づけない……。
胸がすごく苦しい。
そして、張り裂けそうに痛い。
私は、涙が滲み出そうになった目を腕でぐいっと拭うと、立ち上がった。
氷麗ちゃんと視線を合わせると、無理矢理笑顔を作り口を開く。
「迷惑かけてごめんね。私、もう帰るよ。お父さんがこの部屋に帰って来たら、車の中で待ってるって伝えて! じゃね!」
私は氷麗ちゃんに手を上げると、そのまま庭に面した障子を開けた。
そして、後ろを振り返らずに玄関まで足早に歩くと、靴を履き、門の外に停めている車に戻った。
後部座席に座ると、そのまま俯せになる。
リクオ君は、あの時許してくれたけど、氷麗ちゃんは許してくれて無かったんだ。
当たり前だ。あまり話した事ないから。
と言う事は、あの時戦いに参戦していた奴良組の妖怪達も私の仕出かした事を許してないって事になる。
ごめんなさい、と何度謝っても、再度リクオ君を危険に晒す可能性のある私の言葉はきっと信用されない。
「……っ」
私を近付けたくない気持ちは、すごく判る。
「でも、でも……。話したいよ……。近くに、居たいよ……っ」
我慢できずに溢れ出た涙は、お父さんが車に戻って来るまで止まる事は無かった。