第13章 わくわく京都への旅
え!? 氷麗ちゃん!?
私は驚きに目を見開きながら、突然現れた氷麗ちゃんを見た。
氷麗ちゃんは、急いで来たのか肩で息をしている。
何かこの部屋に急ぎの用事でもあった?
首を傾げていると、私の姿を確認した氷麗ちゃんは、ぽかんとした顔になる。
そして、ぽそりと呟いた。
「あら……、若の布団の中に入ってない……?」
「布団?」
何の事だろう?
そう言えば、思い出してみると、この部屋の襖を開けたとたん、「若には一本も手を触れさせない」って言ってたような?
ん? もしかして、私が寝てるリクオ君にいたずらすると思ったから、急いで駆けつけて来た?
うっ……いや、逆襲しようかと思ったけど、別にリクオ君には酷い事してないよ!?
「頬っぺたを伸ばしただけだよ!?」
思わず考えていた事を口に出してしまった私に、氷麗ちゃんは可愛らしいぐるぐる模様の目を大きく見開いた。
「なんですってー!? なんて羨ま……じゃなくて、眠ってる若に何てことするんですかーっ!」
え? え? え?
「頬っぺた伸ばしちゃダメだった?」
結構、友達同士で、良くやる事なのに?
不思議に思いつつ問うてみると、氷麗ちゃんは「当たり前ですっ!」と怒りを露わにした。
「若は、この奴良組の大切な若頭なの! ちょっと! 判る? 有永。あなたも妖怪なら若を畏れ敬いなさい!」
えーっと……
私は、頬をポリと掻いた。
それって、妖怪なら絶対リクオ君を敬わないといけないって事?
私は、そっと片手を上げ、口を開いた。
「ごめん、私、お母さんの血は入ってるけど、基本人間……」
「どの口が人間だなんて言ってるのー! 覚えてるわよ! 妖怪のあなたが若の肩を食い千切って若に大怪我負わせた事を!」
うん。妖怪に変身した私はリクオ君に怪我を負わせてた。
それは事実だ。
怪我をした夜リクオ君の姿を思い出すだけで、思い切り申し訳ない気持ちになる。
「ごめんなさい……」
眉を下げて謝ると、氷麗ちゃんは、ずかずかと私に近寄って来た。
そして、キッと強い目で私を見下ろす。
「いくら若の大事なご友人でも、あなたは若にとって危険だわ。約束して。有永」