第13章 わくわく京都への旅
ほっと息を付くと、そのままリクオ君を見続けた。
と、ふいにいたずらめいた考えが浮かんで来る。
「今、顔に落書きしても絶対気が付かないよね」
落書きされたリクオ君の顔を想像し、ぷぷっと笑いが零れるが、残念ながらここにはマジックは無い。
「逆襲になるかもしれないのになぁ……」
でも、ふと考える。
相手の反応が判らなければ逆襲には、ならないのかも……
「そだよねー。リクオ君が起きるのは遠野の地だし、リクオ君の驚く顔が見れないのは、なんだか悔しい」
うーっ、と私は唸ると寝てるリクオ君の頬に手を伸ばすと、むにっと両頬をつまむとそのまま外側に引っ張った。
触れた感触に胸がドキドキし出すのは、無視をする。
「早く、おーきーてー!」
眠ったままのリクオ君は「うーん」と眉を顰めながら呻くが、目を開ける様子は無い。
なんだか、リクオ君の苦しむ事はしたく無くて、私は頬をそっと離した。
元の表情に戻ったリクオ君をマジマジと見る。
痛みを感じて呻くって事は、眠りが浅くて何か夢を見てるって事?
うん。眠りが深かったら、呻き声も上げないと思う。
どんな夢見てるのかな?
原作であったように、アイドルのマネージャーでもやってる夢でも見てるのかな?
それとも別の夢?
と、またさっきの恥ずかしさの元凶である”愛しい”という気持ちが込み上げて来た。
それを抑えるように息をぐっと止める。
この気持ちは気の所為、気の所為、気の所為……っ!
と、突然、向かい側にある襖がスパーンと開いた。
「そこまでよ! 有永! 若には一本も手を触れさせませーんっ!」
現れたのは、たすき掛けを付けた氷麗ちゃんだった。