第13章 わくわく京都への旅
軽くツン、と軽く引っ張ってみる。
しかし、瞼はピクリとも動かない。
「起きてー。朝だよ? リクオ君」
呼びかけても起きない。
やっぱり、原作通り明日まで眠ったままなんだ……
私はそっとリクオ君の頬を2本の指でそっと撫ぜる。
胸が痛い。沸き上がるこの感情は何だろう?
好き、とは違う。もっともっとリクオ君を大切にしたいような気持ち。
愛しい。
ふいに頭に浮かんだ単語が、この感情にしっくり来た。
「って、ちょっ、ちょっ、い、い、愛しい!? なんで!? なんでそんな事思うの私ー!?」
思わず羞恥に顔に熱が集まり、頭を抱えた。
凄く恥ずかしいし、自分の感情が信じられない。
だって、だって、この気持ち、好きを通り越してるー!?
リクオ君を好きになっちゃいけないのに、なんで好きを大きく通り越した気持ちを抱くようになってるの!?
リクオ君は絶対氷麗ちゃんを好きになるから、こんな気持ち持っちゃダメなのにー!!
そう思うと胸が先ほどとは違う苦しみで息も出来なくなるくらい、痛くなる。
私は、胸の痛みを耐えるように唇を噛み締めるとバッと顔を上げた。
そうだ。この気持ち、吐き出さないで溜め込んだままだから、なくならないんだ。
吐き出せば、きっと綺麗さっぱり無くなるハズ。
私は、リクオ君の方に顔を向けると深く息を吸い込み、ふうー、と吐き出す。
でも、今からする事に緊張と恥ずかしさが混じり合って、心臓が早鐘のように打つ。
大丈夫。誰も聞いてない。
私は眠ってるリクオ君の左耳にそっと唇を寄せると、今後絶対に本人に言わない言葉を口に出した。
「リクオ君、……っ、大好き。胸が痛くてたまらないほど、大好きだよ」
私は、眠っているリクオ君の瞼が微かに震えたのに、全く気が付かなかった。