第13章 わくわく京都への旅
2日後。原作通り物事が進めば、明日には遠野の地で起きると判っていても、起きているリクオ君の姿が見たい。
なんでか判らないけど、胸が苦しくなるほど強くそう思う。
じっとリクオ君の顔を見ていると、隣に座っていたお父さんが静かに立ち上がった。
「お父さん?」
視線を上げお父さんの顔を見ると、お父さんは私を安心させるように笑った。
「奴良君も大丈夫そうだし、今からここのお爺さんに挨拶をして来るよ。舞香はここで待っておいで」
「あ、うん」
素直に頷くと、若菜さんも心配げにリクオ君の様子を見ている氷麗ちゃんに向かって口を開いた。
「氷麗ちゃんもいらっしゃい。手伝って欲しい事があるの」
「えっ! で、でも、若がっ!」
「いーの、いーの! 舞香ちゃんが、居るし! ね、氷麗ちゃん」
「若菜様! 有永さんなんかに若は任せられません! 若は!」
「ほら、行きましょう、氷麗ちゃん」
若菜さんは言い募る氷麗ちゃんの腕を取り、「じゃあ、ごゆっくりね!」とリクオ君によく似た太陽な笑顔を私に向ける。
そして、氷麗ちゃんの腕を引きお父さんと共に部屋を出て行った。
「有永ー! 若に何かしたら、許さないんだからー! 呪ってやるー!」
と閉じられた障子の向こうで氷麗ちゃんの声が聞こえて来る。
氷麗ちゃん。呪ってやるは氷麗ちゃんのお母さんが原作で良く言っていたセリフだよ。
母娘って結構似るんだなぁ、と思いつつ私は再びリクオ君の方へ顔を向けた。
起きない、かな?
……、原作で寝続けてたから、起きないよねー
私はまじまじとリクオ君の寝顔を見つめた。
案外肌は日に焼けてなくすべすべな感じだ。良く見ると夜リクオ君と同じく鼻筋も通ってる。
瞼に掛かる茶色の髪がすごく柔らかそう。
無意識に手を伸ばし私はリクオ君の前髪に触れていた。
あ。サラサラだ。