第13章 わくわく京都への旅
左手には年代物の桐箪笥に色々な本が並べられた本棚。そして右手には制服が掛けられた衣紋掛けに勉強机。そしてその後ろにはまた本棚が置かれていた。
その中、部屋の中心に布団が敷かれ、リクオ君は目を閉じ眠っていた。
胸が何故かきゅっと痛くなる。
「リクオ君……」
原作でこの場面を見た時は別に何も思わず読み進めていたが、実際眠っているリクオ君を見ると心配と不安な気持ちがわき出て来る。
と氷麗ちゃんの可愛らしい声が突然上がった。
「有永ーっ!? どうしてここに居るんですかーっ!?」
その声の方に視線を移すと、リクオ君の眠っている布団の向こう側に正座した氷麗ちゃんが居た。
きっと昨日から付きっ切りで看病していたのだろう。
って、リクオ君の事ばかりに目が行って、傍に居る氷麗ちゃんの存在に気が付けなかった。
ど、どれだけリクオ君の事で頭がいっぱいなの!? 私ー!!
心の中で自分に突っ込んでいると、若菜さんはコロコロ笑った。
「舞香ちゃんと舞香ちゃんのお父さんは、リクオのお見舞いに来て下さったのよ」
「え、え!? そうなんですかー!? でも、なんで有永、さんが若が倒れた事を……」
「うふふ。おじいちゃんが連絡してくれたのよ。なにしろリクオにとって大事な人ですもの!」
「えぇえ!? ちょ、若菜様!? それってどういう……!?」
ぐるぐる目を目いっぱい見開いて驚きの声を上げる氷麗ちゃんに、若菜さんが「あら? まだ内緒だったかしら?」と首を傾げる。
私はその中、若菜さんの言葉に心の中で、うんうんと頷いた。
うん。私にとってもリクオ君は大事な友達だし、リクオ君にとってもそうだったのだろう。
なんだかそれが、普通の友達と言われるよりもすごく嬉しい。
若菜さんに促されるままお父さんと2人でリクオ君の眠っている布団の傍に座る。
リクオ君の寝顔をそっと伺うが、顔色も普通。目立った怪我をしてる様子もない。
ただ、眠っているだけだ。
でも、眠っているより、いつものように澄んだ茶色の目を開けて、笑って欲しい。
そんな欲求が心の中にわき出ると同時に、胸がツクツクと痛くなった。