第13章 わくわく京都への旅
翌日、クーラーの効いたお父さんの車に乗り、リクオ君の家へと向かった。
もちろん、お見舞いの品はお父さんが買ってくれた。
ありがとう、お父さん! お父さんが何者でも、やっぱ頼りになるー!
奴良家に着いた私とお父さんは、出迎えてくれた若菜さんにリクオ君の部屋へ案内された。
改めて見てみると、リクオ君の家はものすごく広かった。
以前来た時は、お母さんに急かされたりしたので、気が付かなかったけど、こうして若菜さんの後について長い廊下をてくてくと歩いていると疎開に入って来た庭はすごく壮大だった。
それに、すぐにリクオ君の部屋には着かない。
左手には広い広い庭。右手には障子の閉じられた部屋が幾つも連なっている。まるで時代劇に出て来る武家屋敷の中のように。
まあ、こういう古い形式の屋敷の名前は武家屋敷という単語しか知らないから、そう言い表すしかないけど。
あっ! あの池はもしかして、河童が住んでる池?
おぉ! あの大きく立派な枝垂れ桜は、いつも原作の夜リクオ君が座っている枝垂れ桜!?
足を動かしながらも視線をあちらこちらに動かし、鼻息を少し荒げていると、前を歩いていた若菜さんの足がある部屋の前でピタッと止まった。
そして「リクオー、入るわよー」と声を掛けるとそっと障子を開けた。
しかし、リクオ君の反応は無い。
若菜さんは、私とお父さんの方を振り返ると困ったように笑った。
「ごめんなさいねー。リクオったらおじいちゃんと遊んでて頭ぶつけて気絶したらしいのだけど、まだ目を覚まさないのよ。お寝坊さんよね」
頭をぶつけた?
この時期に頭をぶつける事件なんてあったっけ?
私は原作を思い出す。
頭を打つ……無い。おじいちゃんと、いやぬらりひょんさんと遊ぶ? それも無い。
寝込むって言ったら……。あ。
リクオ君自身に己の力の弱さを実感させる為に、戦った場面ならある。
京都に行くには、リクオ君の力はまだまだ弱いと。
って、なんで私その場面忘れてたの!?
思い出してたら、2日後くらいに起きるだろうから、お見舞いに行くなんて言わなかったのにー!
心の中で自分の行いを後悔していると、若菜さんから「顔だけでも見てやって!」とリクオ君の部屋に通された。
初めて入る部屋だったが、原作に描かれていた部屋とそっくりだった。