第12章 陰陽師には近寄るべからず
おかしい。完璧に言い返したはずなのに?
戸惑っていると、夜リクオ君は横に座り、私の腰に手を回す。
そして、ひょいっと抱えられ上げ夜リクオ君の膝の上に座らせられた。
ん? ん? ん? 何? この体勢は!?
後ろからお腹の上に腕を回され、背中にリクオ君の体温を感じる。
すごく恥ずかしくて恥ずかしくて、また顔に熱が瞬時に集まった。
「リ、リクオ君! ちょ、ちょ、はなしてー!]
「やだね。こうするの、嫌かい?」
う、なんでか判らないけど、いや、じゃない。
「い、嫌じゃないけど、恥ずかしい!」
と、正直者の口が言ったあとで、はっ!と自分が口にした言葉の意味に気付く。
い、いや、この体勢は恥ずかしいけど、うー、なんて言うか、嫌悪感なんてなくて……っ
ぐるぐるしていると、夜リクオ君がフッと軽く笑った。
「嫌じゃねぇなら、いいじゃねぇか」
「いやいやいや、そんな問題じゃなくて、そもそも何で私を抱っこするのー!?」
「してぇから」
は?
夜リクオ君、人を抱っこしたかったの?
むー、それなら、いつも傍に居る氷麗ちゃんとか抱っこすればいいのに。
そう考えたとたん、胸が潰れるほど痛くなる。
……、あれ? なんで、胸がこんなに痛いんだろ?
夜リクオ君は好きにならないって決めてるのに?
うー、胸の痛みなんて、無い、無いっ!
それより先にこの体勢から、抜け出さないと!
私は横にある夜リクオ君の二の腕をぺしっぺしっと叩いた。
「リ、リ、リクオくん! パトロール! パトロール行かなくていいの!?」
そう、原作ではこの時期、確か街のパトロールに出てたはず!
私に構うより、パトロール行ってー!
と、少し訝し気な声音で「なんで知ってんだい?」と言われ、自分の失態に思わず頭を抱えてしまった。
考えてみれば、この事は一部の妖怪しかしらなかったハズ。
まずい、まずい! どうしよう!! 良い言い訳が思いつかない!!!
くうっ、と、と、取り敢えず、笑顔で押し通す!
私は冷や汗を掻きながらも、明るい口調で言葉を返した。
「い、いや、なんとなく! そうなんとなくだよ!」
あはははー、と笑うと、何故かお腹に回された腕の力が強まった。
そして、左肩に顎を乗せて来ると艶やかな低い声で耳元に囁かれた。
「舞香。そんなにオレの事が気になってたのかい……?」
へ?