第4章 夜若との遭遇
ドキンッとしたのは、一瞬だった。
ひょいっと抱えあげられ、意外とガッシリした肩へ俵担ぎにされる。
ちょっ、なんで私俵担ぎにされてるの!?
答えて! 『ぬらりひょんの孫』の主人公、奴良リクオ君!
心の中であわあわしながらも、私を担いでいる妖怪姿の奴良リクオ君に叫んでいると、ふいに夜リクオ君は低い声で問いかけてきた。
「送ってく。家はどっちだい?」
え? どっちって……
私は目を瞬かせると顔を上げて、周囲を見回した。
知らない家ばかりだ。
闇雲に走ったのがまずかったのかもしれない。
「…………」
ここは、どこでしょう?
電柱に貼られている住所を見ても判らない。
どうしよう!?
「………?」
夜リクオ君が無言で首を傾げる気配を感じる。
拙い。不信感を持たせてしまった!?
「あの、えっと、え、駅どっち、でしょう?」
「……駅?」
私は頷き家の近くにある駅の名前を告げた。
「う、うん。実は私、転校して来たばっかりで、ここいらの地名全く判らなくて……。でも、駅なら判るから、そこを教えて貰えればなんとか」
「…………」
夜リクオ君は、納得してくれたのかどうか判らないが、無言で私の言葉を聞くと「目ぇ回すなよ?」と言い、地面を蹴ると電柱の上に飛び上がった。
「わっ!」
思わず背中にしがみつく。
片方の肩に俵担ぎにされている為、突然の浮遊感と共に地面が遠くなるのが判る。
そして、眼下の景色は風を切る音と共に、目まぐるしい早さで過ぎ去っていく。
すごい高さ。もしかして、空中を飛んでる!?
下は暗くて良く見えないけど、怖い、怖い!
空飛ぶの止めてーっ
目をぎゅっと閉じ、夜リクオ君の背中にしがみついていると、ふいに風が緩やかになり止まった。
私はそっと目を開ける。
そこは、電灯が明々と付いた和室だった。
広々としている。10畳くらいの広さだろうか?
床の間の壁には、書画の掛け軸がかけられ、床には陶磁器が置かれていた。
襖の絵も松や鶴が描かれている。
えーっと、ここどこ?