第12章 陰陽師には近寄るべからず
夜リクオ君は鼻を片手で押さえながら、憮然とした表情で口を開いた。
「元気そうじゃねぇか……」
「う、え? あ、うん。元気、だけど?」
目を見開いたまま、答えると、夜リクオ君は腰を上げ私の前に立ち懐から小さな紙袋を取り出した。
そしてそれを私の目の前に差し出す。
「薬だぜ」
「へ?」
思わず間の抜けたような声を出してしまう。
どこも悪くないのに、薬? なんで??
首を傾げていると、夜リクオ君は自分の前髪をくしゃりと掴み、何故か別の方向を見る。
「……、今日、腹が痛くて来れなかったんだろ?」
お腹……お腹……
しばらく考え、清継君との電話を思い出し、手をぽんっと叩いた。
「あー! そう言えばそうだった!」
お腹痛くて行けない!って言ったんだった!
「ありがと! リクオ君!」
私は仮病だと悟られぬよう、笑顔で薬を受け取った。
いや、だってせっかく薬持って来てくれたんだし! それに、仮病ってバレたら、怒られそう!
でも……
私は目鼻立ちがすっとしているリクオ君の端整な顔をじっと見る。
以前も薬持って来てくれたよね?
からかわれたけど!
もしかして、夜リクオ君も結構優しい?
と、私の視線に夜リクオ君は、何だ? と言うように微かに首を傾げた。
私は慌てて両手を横に振った。
「なんでもない、なんでもない! そだ、花開院さん見つかった?」
「ああ……。修業に励んでてたぜ?」
夜リクオ君は何かを思い出したかのように唇を持ち上げ笑んだ。
やっぱり原作通り昼リクオ君がゆらちゃんを見つけたのかな?
それから、あの2人との戦い?
見る限り、大きな怪我とかしてないようだけど、あの何でも溶かす水の花の攻撃は、大丈夫だったのかな?
そう思っていると、夜リクオ君がふいに口を開いた。