第12章 陰陽師には近寄るべからず
ゾゾゾーッと悪寒が背筋を駆け抜ける。
「あ、ははは………、しにたくない、絶対、死にたくない……」
『え? 何か言ったかい? 有永さん?』
「いやいや、何でもない、何でもない、あっ、いたたたたたっ! 急にお腹が!!」
『えぇ!? どうしたんだい!? 有永さん!』
私は、弱弱しい声で言葉を続けた。
「ごめん……、清継君。行きたいんだけど、急にお腹が痛くなっちゃって……、今日は行けそうにないや」
『それは大変だ! 大丈夫かい!? 有永さん!』
「あー、1日休めば元気になるよ……。ほんとごめんー」
『仕方ないなぁ。じゃあ今日1日ゆっくりしておきたまえ。はっはっはっ、旅行の日程が決まったらまた連絡するからね!』
「うん。じゃねー」
私は受話器を置くと、ほうーっと大きな安堵の息を付いた。
そして、ぐっと拳を固める。
よっし! 危険回避成功ーー!
ナイス自分!
「旅行っていう言葉も何か悪い予感がひしひしするけど、その時はまたパスすればいいよね!」
そして、再びぐうたら漫画を読むべくスキップしながら自分の部屋へと戻った。
枕元に置いてある電子時計が23時を示す。
友達から借りた青年格闘漫画も読み終え、明日返すのみ。
ふう、合計20冊は読みごたえあったー!
「今度は残り31巻全部借りようっと!」
るんるん気分で、スタンドの灯りを消し、目を閉じた。
すやすやと眠っていると、何かの気配に意識が浮上する。
「んー……、なに……?」
薄っすらと目を開けると朱色混じりの金の目があった。
「わっ!!」
驚愕に思わず上半身を起こすと、ゴンッと前頭に何かがぶつかった。
目の前にチカチカと小さな星が舞う。
「あいたたた……」
痛む前頭を撫ぜてると、左脇から「いってぇ……」と低い声で呻く声が聞こえて来た。
この声は、夜リクオ君!?
慌ててスタンドのスイッチを付けると、座り込み鼻を押さえた夜リクオ君の姿がその灯りによって照らされた。
「なんで、リクオ君が居るのー!?」