第12章 陰陽師には近寄るべからず
思わず遠い目をすると、こちらに向き直り再び腰を下ろしたお母さんは、私の頭を撫ぜた。
「他に痛いとこなぞ無いかえ?」
「あ、うん、ないない!」
私はお母さんの気遣いがすごく嬉しくて、笑顔になると、ふいに頭を撫ぜるお母さんの手が止まった。
ん?
「舞香を襲いおった陰陽師。ほんに食い殺したいぞえ……」
お母さんの身体から静かな威圧感が滲み出る。
も、もしかして、これって殺気ー!?
本気だ。本気で食い殺す気満々だ!
よ、良かった! 詳細言わなくて!
私は、殺気を出すお母さんから目を逸らしつつ、さっきの私グッジョブ! と自画自賛した。
しばらくすると、鴆さんが現れ診察された。
鴆さんは、原作通り髪が短く目と眉が吊り上がってる妖怪だった。
最終巻に近い漫画の表紙に鴆さんが筋肉隆々の上半身を出したものがあったのを思い出す。
現実もやはりそうなのかな? とまじまじ鴆さんの上半身を見ていると夜リクオ君が、何故か不機嫌な顔をしだしたが、その理由がさっぱり判らなかったので、気付かないフリをした。
そしてやはり診察結果は、たんこぶだった。
うん。あの攻撃受けてたんこぶ一つで済むなんて、もしかして私の身体って結構頑丈?
そんな感想を抱きつつ、おいしいご飯をご馳走になり、遅れて車で迎えに来たお父さんに連れられ、私は家へ無事に帰った。
って、言うか、またあの2人に会ったらどうしよう?
会った瞬間、全速力で逃げるしかないかな?
「よっし、逃げるが勝ちって言うし、頑張ろ!」
私は、ベッドの上で拳を握った。