第12章 陰陽師には近寄るべからず
「舞香。小物に舐められたら終いじゃ。きちんと上下関係を教え込むのも力有る妖怪の仕事じゃぞ?」
「いやいやいや、その前に氷麗ちゃんはリクオ君を慕う妖怪だから! リクオ君を守ろうとしてるだけだよ!」
「じゃが、喧嘩を売られておるのじゃぞ? 生まれて50年も存在してない小娘にのう」
と、私達のやり取りを茫然として見ていた氷麗ちゃんが、何故か驚いたようにぐるぐる模様の目を見開いた。
ん? なんで驚いたような目で私を見るんだろ?
なにか驚くような事言ったっけ?
お母さんの足にしがみつきながら、心の中ではて?と首を傾げる。
と、今まで黙っていた夜リクオ君が、口を開いた。
「氷麗……、雷獣はオレの客だぜ? 客に手ぇ出すつもりかい?」
「いや、リクオ君。それ先言おうよ」
思わず半眼になり、突っ込んでしまう。
いや、氷麗ちゃんが大人しくなるの待ってたんだと思うよ?
でも、そのセリフ、もっと前に言っとけば、お母さんももっと穏やかな対応してたと思うよ!?
そう思っていると、氷麗ちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
「え? え? えぇえええーーーーっ!? お、お客ですかーー!?」
つららちゃんは、夜リクオ君とお母さんの顔を交互に見る。
「だ、だって、みんなが雷獣が攻めて来たって、え? え? えぇえっ!?」
んー? お母さんが攻めて来たって奴良組の妖怪達が騒いだら、そりゃ氷麗ちゃん、リクオ君の事が心配で守ろうとすると思うけど……
他の妖怪達が出て来ないよね?
初めてこの家に泊まった時会った首無さんとか、見た事ない青田坊さんとか黒田坊さん。
もしかして、どこかで様子を伺ってる?
そう推察していると、夜リクオ君が落ち着いた声で氷麗ちゃんを宥める。
「落ち着け……。氷麗」
「は、はい……。で、でもリクオ様……」
薙刀を消し、迷いのあるような目で、本当に客なのか?と伺う氷麗ちゃんにお母さんはそっけなく言い放った。
「妾はただ舞香を迎えに来ただけじゃ」
「迎え、ですか?」
「ああ、だが舞香は怪我してたみてぇだから、鴆を呼んでんだ……」
いや、たんこぶです。