第12章 陰陽師には近寄るべからず
目を瞬かせていると、夜リクオ君が氷麗ちゃんに向かって静かな声音で口を開いた。
「止せ。氷麗」
しかし、氷麗ちゃんはキッとお母さんを睨むと夜リクオ君を庇う様に片腕を上げた。
「いいえ! 若、お下がりください! 雷獣は私が!」
そんな氷麗ちゃんに夜リクオ君は「おい……」と呆れたような視線を向ける。
と、私と向かい合っていたお母さんは、氷麗ちゃんの方へ身体を向けた。
そして鋭い声をあげる。
「童(わっぱ)。なんじゃこの女は。けたたましいのう。潰して良いかえ?」
身体を氷麗ちゃんの方に向けた所為でお母さんの表情は見えないが、声音からして、きっと不愉快げに眉を寄せてそうだ。
「なっ! 私は雷獣などに負けません!」
「ほう……? 力の差も判らぬ小娘じゃ。判断を誤るとこの先存在できぬようになるぞえ?」
お母さんは、身体に小さな雷をパリパリッと纏いつつ立ち上がった。
「ちょ、お母さん!?」
私は慌ててお母さんの両足に腕をがしっと回して止める。
いやいや、今、私達リクオ君の家にお邪魔してるんだよ?
暴れちゃだめー!