第12章 陰陽師には近寄るべからず
ふ、と意識が浮上する。
薄目を開けると、木目の天井が目に入って来た。
ここ、ど、こ……?
わたし、確か……。
今までの事を思い出そうとすると、頭がズクンッと痛んだ。
「いっ……!」
「舞香……。気ぃ付いたのかい?」
う、え? この声は夜リクオ君?
いつの間にか布団の中に寝かされていた私は、痛む頭に右手を当てつつ、首だけ動かし声がした方へ顔を向けた。
「あ、れ? なんで、リクオ君が居るの? 私、家に帰ってて……」
「ああ……」
「ここ、どこ……?」
「オレの家だ……。路地裏で倒れてる所を連れ帰ったんだ」
「路地裏……?あー……確か、暗がりに引っ張り込まれて……、あの2人に攻撃されて……それから……」
と、言ったところで左手がぎゅうっと強く握り込まれた。
「いたっ! ちょ、ちょ、痛いよ! リクオ君! って、いつの間に手握ってたのー!?」
「ずっと握ってたぜ? 舞香……」
「は、はい?」
手はきつく握られたままだが、夜リクオ君の据わっているような目に何も言えなくなる。
思わず、どもりつつ返事をすると、切れ長の目が私を静かに睨んだ。
「なんで引っ張り込まれてんだ……?」
「い、いや、突然だったし、抵抗する間もなかったから……」
「へぇ……」
低い声に怒気が籠っているようで、なんだか怖い!
私は必死に左手をリクオ君の手から離させようと動かすが、離れない。
反対に更に力を込められる。
「痛い、痛い! ちょ、骨折れるって!」
逆効果ー!?
そう叫ぶと、握られた手の力が少し緩んだ。しかし、未だ握られたままだ。
なんで、握ってんだろ?
と、心の中で首を傾げていると、リクオ君の紅い目が私を見据えた。
「オレは送ってくっつーたよな……?」
「は、はい! 確かに! で、でも」
「昼のオレは帰ってからも心配してたんだぜ? その心配が大的中だ……」
しんぱい……?
私はまじまじと夜リクオ君を見る。
「え、っと、あの、今のリクオ君も?」
「当たりめぇだろ?」
その言葉に何故か胸の中がどくんっと熱くなると同時に心臓が早鐘を打ち出した。