第12章 陰陽師には近寄るべからず
そして、狭い路地の中に乱暴に放り出され、そのまま、尻餅を付く。
乱暴に放り出された衝撃で、尾てい骨が思い切り痛い。
「いた、た……、いきなり何するの!」
お尻を片手で押さえつつ、私を乱暴に放った人物を恨みを込めて見上げるが、夕日も沈み薄暗闇の今では、輪郭しか判らない。
目の前に立っているのは2人組の男だった。
2人共、マントのようなものを羽織っているが、服の詳細は判らない。
髪は共に短いが、後ろにいる人の方が若干短い。
と、ライトを付けた車が2人の後ろを右から左へと走り抜ける。
一瞬横から照らされた鋭い眼光を放つ顔。
どこかで見た事のある顔だった。
どこでだった? 確か……
目の前の2人を見据えながら、頭の中で必死に考えていると、手前の鋭い目の男が懐から竹筒のようなものを取り出しつつ、口を開いた。
「妖怪が電車に乗るなんてな。本当にこの町は歩けば妖怪にあたるな……。噂通りだ」
ちょっと待って! 思い出したー! そのセリフにその顔付き! 確か、ゆらちゃんの兄の竜二さんー!?
いや、待って、待って。
原作では、こんな場所なんて歩いてなかったよ!?
なんで、こんなとこに居るのー!?
「人の姿を滅するのは、忍びない。正体を現せ」
「い、いや、ちょっと待って! 私、半分妖怪の血が入ってても人様に迷惑かけた事ないよ! ゆらちゃんのおにい……、いーっ!?」
「”餓狼”」
竜二さんはその言葉を紡ぐと同時に竹筒を上に掲げる。
その瞬間大きな水の塊がそこから飛び出し、それは牙を持った大きな顎を形どった。
それは口を大きく開くと私に向かって襲い掛かって来た。
避け、られない!
「い、やーっ!」
ぎゅっと目を瞑り、頭を庇うように右手をかざした。
ザシュッ、と何かを切り裂く音とゴバァッと何かが崩れ落ちる音が耳に響く。
「う、……え?」