第12章 陰陽師には近寄るべからず
「ん?」
「待って! 舞香ちゃん! 女の子一人で家に帰せないよ!」
「いやいやいや、ほんとに大丈夫だから」
「ダメだ! ボクには送る責任があるから!」
と、ベリッとリクオ君の手が私の手首から離された。
離したのは、ムッとした顔の氷麗ちゃんだった。
「若! 有永なんて送らなくていいんです! それに、今日は鴆様もいらっしゃるじゃないですか!」
「え、でも、氷麗……鴆君は夜に」
「ダメです!」
そんな仲の良さそうなやり取りをする2人を見てると、また胸の苦しさがぶり返して来そうになる。
私は、それを振り切るようにブンブンと頭を振ると、「また遊ぼうねー!」と言って手を大きく振り、ホームに向かって駆けだした。
「あ、待って!」
と、リクオ君の声がしたが、気の所為にする。
引き留められてる時間が思ったよりもかかったのか、ホームに辿り着くと、すぐに電車が来た。
私は、それに乗るとポスンと空いてる席に座り、今日一日に乗った乗り物を思い出す。
そして、楽しかったなー! と一人呟いていると、ふいに誰かに見られているような強い視線を感じた。
「ん?」
私は周りを見回すが、こちらを向いてる人は誰も居ない。
「気の所為かな? んー、まあ、平凡顔の私を見る人なんていないから、きっと気の所為!」
そう結論付け、私はまた楽しい思い出を思い出そうとするが、また強い視線を感じる。
気の所為、気の所為、気の所為。
と心の中で繰り返し呟き、刺すような視線から気を逸らした。
やっと降りる駅に電車が到着すると、私は足早に電車を飛び出した。
視線はもう感じない。
ふう、と額を拭うと、安心からなのか、小さくお腹が鳴った。
「お腹へったー。今日のご飯何かなー? モモの唐揚げもジューシーだけど、油の乗ったステーキも捨て難いよねー」
夕ご飯に思いを馳せながら、駅を出ると家に向かっててくてくと歩く。
と、突然横から右腕を掴まれると、ビルとビルの間の暗い隙間に、強く引っ張り込まれた。
「えっ!?」
ちょ、何!?!?!?