第12章 陰陽師には近寄るべからず
休憩をし終えた後、また2個の楽しい乗り物に乗り、上機嫌の私はまた乗りたい乗り物を見つけると前方を指さした。
前方の少し離れた場所で大きな船体が振り子のように揺れている。
「リクオ君! 今度は、あれ乗ろう! パイレーツ!」
「そうだね! うん。行こう!」
2人並んでさっき乗った乗り物とかの感想を言いながら、パイレーツに向かって歩いていると、遠くからリクオ君の名を呼ぶ可愛らしい女の子の声が聞こえて来た。
ん? と声が聞こえて来る方向へ顔を向けると、遠くから髪の長い女の子が「リクオさまー!」と片手を振りながらこちらへ猛スピードで駆け寄って来ていた。
それは、夏なのに首にマフラーを巻いている氷麗ちゃんだった。
氷麗ちゃんは、リクオ君の前で足を止めると、凄く嬉しそうな顔でリクオ君の顔を見、その左手を両手で包み込んだ。
そして、それをぎゅっと握る。
おぉ!? 氷麗ちゃん、大胆!!
そう思うと共に、何故か胸の奥がツキン、と鋭く痛んだ。
そして胸の中に仲が良い2人をこれ以上見たくない、と言う思いが沸いて来る。
どしたの!? 私! なんでこんな気持ちが沸き上がって来るの!?
私の好きなのは、清継君!!
そう心の中で、沸き出る感情に言い聞かせるのに、今度はだんだんと胸が苦しくなって来る。
うー、なんで苦しいの!?
自分の変化に眉を寄せて考え込んでいると、耳に氷麗ちゃんの明るい声が飛び込んで来た。
それに釣られるように顔を上げると、氷麗ちゃんがリクオ君の顔に自分の顔を近付け、覗き込んでいた。
その2人の顔の近さにまた胸がズキンと痛む。
「やっと見つけました! リクオ様! 探してたんですよ!」
「アハハ……、氷麗、ごめん」
リクオ君は後ろ頭を掻きつつ顔に苦笑を浮かべ謝るが、ふと何かを思い出したように顔から笑みを消した。
そして自分の手を握りしめている氷麗ちゃんの両手を見、そして私をちらりと見た。
私はその視線に自分の感情を気付かれたくなくて、咄嗟に笑顔を作りそれをリクオ君に向ける。
「ん? ん? どしたの? リクオ君?」