第11章 邪魅事件発生
私はその危険な誘いに、ぶんぶんっと勢いよく頭を横に振った。
「私は人間!」
「いいじゃねぇか。お袋さんは雷獣だしな……」
不敵ににっと笑うリクオ君に、不覚にもまた心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。
だめっ! リクオ君に心惹かれたら、ダメ!
私の好きなのは、清継君!
目をぎゅっと閉じ、ドキドキを振り払うように再び首を横に振ると、私は口を開いた。
「自由に変身できないし。何より、戦いよりも平和に暮らしたいの!」
「……、今はいいか。いずれ、な」
「いやいや、いずれも何も、そんな時なんて来ないったら、来ない!」
私は、リクオ君から目を逸らし、深く溜息をついた。
はぁ……どうして勧誘なんかされるんだろう?
いつも、私をからかっている様子のリクオ君。はっ!? もしかして、新手のからかう為の手口!?
そう結論付けると、私は前触れもなく、夜リクオ君に向かってビシッと指さした。
「いつかお返しするから!」
リクオ君は一瞬きょとんと不思議そうな顔をするが、それはすぐに掻き消え口角を持ち上げると、再びにっと笑った。
「……、期待して待ってるぜ」
その自信ありげな笑みに早々と自分が後悔しそうな気がしてきたが、気のせいにした。
よし、がんばろう!
と、辺りが薄っすらと白んで来た。
もう少ししたら、日が昇る。
結局、徹夜してしまったよ……。うー、自覚すると眠気がどっと襲って来る。
「ふぁ……」
小さく欠伸を漏らすと、突然身体が宙に浮き、足が空中でブラブラ状態になる。お腹には、またしても固い骨の感触。
って、また夜リクオ君の肩に担ぎあげられてるー!?
「ちょっ、リクオ君!?」
「さっさと帰るぜ……。眠てぇんだろ?」
「一人で歩けるー!」
「くっ……、別にいーじゃねぇか」
面白そうに笑う夜リクオ君の声が耳に入って来る。
いやいや、面白そうという理由だけで、俵担ぎしないでー!
そう心の中で叫んでいると、隣に邪魅と一緒に歩いていた菅沼さんが、くすっと笑った。