第11章 邪魅事件発生
後ろを振り返ると腰まである長い黒髪を持ち、顔へ縦長の呪符を何枚も張り付け、着物を着た男の人がおののく菅沼さんと向かい合う様にして立っていた。
身長は2mくらいもある長身だ。
それを見た夜リクオ君は、菅沼さんに向かって口を開いた。
「そいつはあんたを守ってたんだ。さっきだってヤツらを懲らしめるのに手ぇかしてくれたしな……」
夜リクオ君と一緒に戦ったんだ……。
よっぽどあの悪徳神主達の所業を腹に据えかねてたんだなー……
と、夜リクオ君のその言葉に菅沼さんは驚きに目を見開いた。
「どうして……? 私達一族を恨んでいたんじゃないの……?」
「あんたは、自分を殺した妻の子孫だが、主君の子孫でもある。ずっと主君の血筋を守って来たんだ。忠義の塊だぜ……。こいつは」
無言で菅沼さんを見下ろす邪魅に、菅沼さんは、おずおずと口を開く。
「あの……、誤解してて、ごめんなさい。ずっと守ってくれて、ありがとう……」
「……」
邪魅は菅沼さんにお礼を言われたが、何も反応せず、ただじっと菅沼さんを顔に貼られた呪符の中から見つめていた。
ん? 何も反応を返さないって事は、邪魅って話せない?
そう心の中で首傾げていると、夜リクオ君が私の右肩に軽く手を置いた。そして、邪魅に向かってきり出した。
「邪魅……。見事な忠誠心だぜ」
と、邪魅はこちらへと振り向き、男か女か判らないような声で言葉を発した。
「どこの者かは知らぬが……、この御恩はーー」
って、話せたの!?
心の中で突っ込んでいると、原作通り、夜リクオ君と邪魅は、焼け落ちた拝殿の上で、杯を交わす流れとなった。
杯を交わし終えると、夜リクオ君は切れ長の目をこちらに向ける。
「舞香もオレと杯を交わさねぇか……?」