第11章 邪魅事件発生
なんだか、危険を感じ、私は隣に居た菅沼さんの腕を掴んだ。
「ちょっとまずいよ!菅沼さん、逃げよう!」
「待って、神主さんだけは許せない!」
「私達だけじゃ、どうにもならないって!」
腕を引いても踏み止まる菅沼さんの前に居た悪徳神主は、「そうだねぇ……」と俯いていた顔を上げる。
その顔は仮面を脱ぎ捨て、暗くおぞましい表情をしていた。
「知ってしまったなら仕方がない。集英建設さん、お願いしますよ」
そしてにやりと顔を歪ませる。
その言葉に黒服の男達が動き出した。こちらへ向かって。
私はとっさに菅沼さんの腕を強く引っ張ると、後ろに庇った。
そして目をぎゅっと閉じながら無意識に右腕を振った。
「来、るなーっ!」
すると、「グワッ」という呻き声が聞こえて来た。
ん?
そっと目を開くと前には、仰向けに倒れた黒服の男。胸の辺りが切り裂かれ、切り傷から血が流れていた。
そして振り上げた右手の指先には鋭い爪が光を放っていた。