第11章 邪魅事件発生
「そう言や舞香。妖怪にならねぇのか?」
「自在に変身できない。出来てたらしてる。そして速攻帰るよ!」
「帰さねぇよ」
ちょ、ちょ!? 何考えてんの!? リクオ君!!
心の中で叫んでいると、いつの間にか秀島神社の境内にたどり着いていた。
夜リクオ君は私を担いだまま、スタスタと拝殿へと向かう。
「ちょ、リクオ君!? 着いたから、降ろしてー!」
しかし、私の言葉に応えず、後ろに邪魅と菅沼さんを引き連れて大きな賽銭箱がある場所へと上った。
拝殿の中はオレンジ色の明かりが灯っていて、野太い男の人達の笑い声が洩れている。
夜リクオ君は「思ってた通りだぜ……」と不敵な表情を浮かべながら呟くと、後ろの菅沼さん達の方に視線を向けた。
「行くかい?」
待ってー! 菅沼さん、女の子! 女の子を突入させようとするなんてダメったら、ダメ!
「菅沼さん、ここで待ってよう!」
私は右手でぐっと拳を握り、目の前の菅沼さんに強く訴える。
が、菅沼さんはふるふると首を横に振った。
そして、キッと強い目で拝殿の扉を見ると「行くわ」と短く答えられた。
「いやいや、あぶないって!」
「ありがとう。でも、私知りたいの」
「ちょ、ちょ、」
菅沼さんの答えに狼狽えていると、夜リクオ君が口を開いた。
「舞香も心配なら、菅沼サンの傍についてりゃいいじゃねぇか」
「危ないとこ、行きたくない!」
はっ、つい、心の声が!
「舞香もこう言ってついて来るって言ってるし、頼むぜ。菅沼サン。邪魅」
私の言葉と反対の言葉を菅沼さんに伝える夜リクオ君。その口元はいたずらを企んでいるように口角を上げていた。
なっ!?
「え?」
きょとんと目を丸くする菅沼さん。
その間にリクオ君は口をパクパクしている私を肩から降ろすと、拝殿の仕切られた扉を音も無く開ける。
目の前には、黒服を着て人相の悪そうな男の人達が10数人ほど座り、下卑た笑い声を上げていた。