第11章 邪魅事件発生
夜が更ける。眠気もマックスだ。
でも、事が終わるまで見張らないといけない。
目をこすりつつ、菅沼さんの部屋の襖をじーっと見ていると、突然、襖がドンドンッと大きく叩かれ始めた。
菅沼さんが、襲われてる!!!
確か原作では、ここで襖が切れるハズ!
……、ってあれ?何も起こらない?
夜リクオ君の姿もない。
ちょ、ちょっと、大丈夫かな?
思わず身を乗り出す。すると耳元で低く艶やかな声が聞こえて来た。
「こんな所で何してんだい? 舞香」
「わっ!?」
思わずビクッと身体を揺らし、飛び上がる。
うわ、うわ、今、心臓が口から飛び出そうだったよ!
まだドキンドキンしている。
「ちょっ……」
文句を言おうと横を振り向くと、思ってもみないほどの至近距離に夜リクオ君の顔があった。
ドキンッと先ほどより強く心臓が飛び跳ねる。
「ちょい、近っ、近っ!」
何故か顔に熱が籠る。
思わず身体を後ろに反らすと何故かクッと面白そうに笑われた。
「こんな時でも面白れぇな。舞香は。オレが出て来るのを待ってたのかい?」
「いや、違うよ」
顔の赤みを消すようにぺちぺち頬を叩きながらも、私はどきぱっと答えた。
「つれねぇな」
しかし、夜リクオ君は口角を持ち上げ楽しそうな表情をしている。
なにか遊ばれてるようで、私は眉間に皺を寄せた。
「うー、リクオ君。菅沼さんの為に来たんでしょ?早く、行って!」
私は菅沼さんの部屋を指さす。
が、夜リクオ君はちらりとそちらを見、あろう事か私を後ろから抱き込んだ。
「まだ時じゃねぇか……」
呟きながら私の肩口に顎を乗せる。
なんで、こんな状態になってんのー!?
「離して! こういうことは、好きな人としてー!」
と、夜リクオ君の腕の中でもがく中、自分の発した言葉にツクンと胸が痛んだ。
「面白い舞香は好きだぜ?」
「は?」
思わず頭の中が真っ白になる。
と同時に菅沼さんの部屋の入口の襖が、大きな音と共に真ん中から袈裟懸けに斬られた。