第11章 邪魅事件発生
タップタップと音をたてながら海辺に浮かぶ漁船の群れ。
神様はいませんでした。
うううっ
原作の通りになるなんて、恐ろしき強制力とでも言うんだろうか。
項垂れる私の隣で、いつの間にか水着に着替えた巻さんと鳥居さんが両手を地面に付け同じように項垂れていた。
そうだよね。ガックリ来るよね。
そして反対側の隣では、リクオ君とカナちゃんが呆然としたような声を出した。
「漁港だね」
「そうね。漁港だわ」
「あ、は、はははは……」
乾いた笑い声しか出せない。
そんな私の肩を諦めたような顔でぽんぽんと叩いてくれるリクオ君。
優しさが心に染みます。
心が暖かくなるようで……
ううっ、また好きになってしまう!
いやいや、私の好きなのは、清継君!
ブルブルと首を振っていると、突然、清継君が絹を裂くような悲鳴を上げた。
ん?
顔を上げるとそこには、巻さんと鳥居さんに詰め寄られ、襟首を絞められている清継君の姿があった。
「清継ーっ、あんたってヤツはー!」
「期待した私がバカだったよ!」
「このっこのっ!」
「ひーっ、やめてくれーっ!」
もっとやれ、と思った私は、悪くないと思う。
いや、清継君は好きだけど。
と、うつむいていた菅沼さんがクスッと笑った。
皆の視線が菅沼さんに集まる。
「みんな、ありがとう」
「「「へ?」」」
皆がきょとんとする中、菅沼さんは柔らかく笑みながら言葉を続けた。
「邪魅の出る家は、町の人からあまり良く思われてなくて……。そんな中、皆みたいな仲間がいるってことが、私本当に嬉しくて……。来てくれて本当にありがとう」
私は思わず「それ!」と菅沼さんを指差した。
「え?」
目を瞠る菅沼さんに構わず、私は言葉を続ける。
だって、この変な感じに耐えられなかったから。