第11章 邪魅事件発生
リクオ君になんとか右手を離して貰い、女子達の部屋へ駆けつけた。
「みんな! 大丈夫!?」
リクオ君が開け放たれた襖に辿り着くと、そのままポカーンとした顔で固まった。
「どうしたの?」
私はそう言いつつ、右手を隠しながらひょこっとリクオ君の横から覗くと……
四方の壁にお札がビッシリと張り付けられている菅沼さんの部屋の中。カオスな場面が広がっていた。
まずは巻さんと鳥居さんが、島君と清継君のお尻をゲシゲシッと蹴り倒している。
そして、人間に化けた氷麗ちゃんは冷たい目線でそれを見ている。
菅沼さんも口に手を当てながらも、呆れた視線を送っている。
その中、カナちゃんは泣きだしそうな顔をしながらへたり込んでいた。
ちょっ、カナちゃん、どうしたの!?
もしや島君か清継君に不埒な事をされたの!?
問い詰めたいが、右手の爪がまだ伸びているので、近寄れない。
「カナちゃん……」
心配だ。
と、突然お尻を蹴られ蹲ってた清継君が大声を上げた。
「奴良くーんっ!!!」
そして、見事な高速移動でリクオ君の前に移動する。
おおうっ
リクオ君の隣に居た私は、思わず1歩後じさった。リクオ君もそうだ。
しかし清継君は、逃がさないっとばかりにリクオ君の両肩をガシッと掴んだ。
「奴良君! こっちに妖怪が出るって言ったのに、何故いないんだい!?」
「ちょっ、清継君、まっ、揺らさないで」
「何故なんだーい!奴良くーんっ!!」
ガクガクと揺さぶられるリクオ君を横に見ながら私は心の中で首を傾げた。
リクオ君、こっちの部屋に妖怪がいるなんて、言ったっけ?
先程の事を思い出そうとするが、襲われた記憶が大きくて清継君の事まで思い出せない。
……。うん。見守るしかない。ごめんなさい、リクオ君。
私は乾いた笑いを口に乗せながら、心の中で謝罪した。
そんなこんなで一夜が明け、邪魅についてもっと詳しい話しを例の神主さんに聞こうと言う事になった。
もちろん爪は一夜明けたら引っ込んでいた。
自在に出し入れできるようになればいいのになぁ、と思う。