第11章 邪魅事件発生
え?
顔を上げるとゆらりと2,3体、白いものが襲いかかって来た。
「い、やーっ!」
目をぎゅっと瞑りながら、右手を斜め上に振り上げる。
と、今度は刃物が物を切り裂く音が連続して聞こえて来た。
そっと目を開けるとヒラ、ヒラ、ヒラ、と先ほどと同じように切り裂かれた人型の紙が舞い落ちる。
いつの間にか自力で脱出したリクオ君が、私の横で長ドスを鍔鳴りさせながら長い息を吐いた。
あ、助けてくれたんだ……
熱いものが胸を満たす。
「あ、りがとう、リクオ君」
「舞香ちゃん。無事で良かった」
ニコッと笑顔を向けられ、何故か顔に熱が集まっていく。
何?何?何?この熱、なに!?
あわあわしていると、リクオ君は破れた人型の白い紙をつまみ上げた。
「これ、式紙だよね。妖怪じゃない……。舞香ちゃん。この騒動……もしかして……」
私は頬をぺしぺし軽く叩きながら、首を傾げた。
「もしかして?」
と、女の子達の部屋から大きな物音と悲鳴が上がった。
「あっちに邪魅が出たのかもしれない! 行こう! 舞香ちゃん!」
リクオ君は私の右手首を掴むと私を引っ張りながら、駆け出した。
右手首から感じるリクオ君の体温に心臓がドクドクと早くなる。
なんだかそのままずっと繋いでいて欲しい……。
はっ!?不謹慎にもそう思ってしまった自分が恥ずかしい。
と、ふと自分の右手が目に入った。
爪が伸びきったままだ。
ちょ、ちょっと待って、リクオくーん!!!!