第10章 期末テストなんてあるんだね
「若!」
その妖怪は、夜リクオ君に駆け寄ると錫杖を構えお母さんに鋭い視線を投げ掛けた。
「キサマか!若に手を出したのは!」
その言葉にお母さんは眉間に皺を寄せた。
「なんじゃ。いきなり現れおって。無礼なカラス天狗じゃ」
「キサマに答える義理はない!覚悟!」
黒い翼を広げお母さんに攻撃しようとする、黒髪の妖怪。
ちょちょ、
「まっ……!「待て」」
夜リクオ君が黒髪の青年を手で制した。
「若!? 何故!?」
「……」
夜リクオ君は黒髪の青年の問いに無言で応えると、お母さんに向かって静かに口を開いた。
「手厳しい挨拶ありがとうよ。だが、なんでそんなにオレを嫌うんだい?」
「親なら当然のことじゃ」
「?」
夜リクオ君は不思議そうに首を傾げる。
お母さんの気持ちがイマイチ理解出来なかったようだ。
と言っても、私も良く判らない。
「若。帰りましょう」
「……ああ」
夜リクオ君は黒髪の青年の言葉に頷くと、こちらへ振り向く。
そして、ニッと唇の端を持ち上げた。
「舞香。また来るぜ」
「え?」
また、来るって……
鳩が豆鉄砲食らったように目を見開いていると、「じゃあな」というセリフを残して、黒髪の青年と一緒に窓から立ち去って行った。
残ったのは、壊されたドアと静かに怒りを滾らせているお母さんだった。
「舞香……。なぜそこで断らぬのじゃー!」
「うわわわ、ごめんなさいー!」
そして、その後、正座をさせられ、懇々とお説教をされた。
ううっ、足が痛い――っ!